出版社内容情報
死の瞬間までアムビシアスであり度い――百歳にしてなおみずみずしい文章をものし、生涯にわたって現役作家でありつづけた野上彌生子の本格的評伝。
内容説明
夏目漱石の指導を受け、二十二歳でデビュー。生涯休むことなく小説を書きつづけ、百歳直前にしてなお傑作『森』をものにした野上彌生子。中勘助への秘めた初恋の想い。野上豊一郎との勉強仲間のような夫婦生活。六十八歳になってから恋文を交わしあった田辺元。死の瞬間までアムビシアスでありたいと願った彌生子の書き下ろし評伝。
目次
第1章 師・夏目漱石―作家になるまで
第2章 初恋の人・中勘助―『海神丸』と『真知子』
第3章 夫・野上豊一郎―欧米の旅
第4章 山荘独居―戦時中の日記から
第5章 『迷路』―夫豊一郎逝く
第6章 老年の恋―田辺元と彌生子の往復書簡
第7章 『秀吉と利休』―虚構の力
第8章 友人・宮本百合子―現代女性作家の先駆け
終章 『森』―白寿の作家として母親として
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
4
『人間・野上弥生子:「野上弥生子の日記から」』に次いで2冊目の野上彌生子の評伝を読む。彼女は満100歳をあと30数日で迎えようとしていた1985年に急逝。執筆第一で簡素と単純を信条とした暮らしをし、「書き続けることがペンを執る者には何よりも大切なことだ」と97歳の日記に書き残している生涯現役作家であった。師・夏目漱石、初恋の人・中勘助、夫・野上豊一郎、田辺元との老年の恋、友人・宮本百合子、78歳に完結した『秀吉と利休』、のことが書かれている。野上の人となりを知るのによいテキストだ。2012/09/25
midnightbluesky
3
こういう評伝の書き方もあるのか!と変な感心をしてしまった。評価しながら卑下している、という不思議な書き方・・・。「へ~っっ、そうなんだぁ!」って言いながら心の中で「プププッ」ってしている感じ。しかし着地点は“立派な女家長”で落ち着くのだから、もう何がなんやら・・・。でも不思議と野上弥生子の人とナリが伝わるのだから。2012/05/22
satooko
2
野上豊一郎との理想的夫婦、田辺元との理想的知的関係を美談に崇め立てられているのを、さすが意地悪岩橋邦枝。人間、野上弥生子(勘違い娘、わがまま妻、猛母、やり放題婆)をムキムキにしてくれた。評伝ながら、大笑いの箇所多数あり。ああ、面白かった。ますます野上弥生子好きになりました。2011/11/17
どんぐり
1
『人間・野上弥生子:「野上弥生子の日記から」』に次いで2冊目の野上彌生子の評伝を読む。彼女は満100歳をあと30数日で迎えようとしていた1985年に急逝。執筆第一で簡素と単純を信条とした暮らしをし、「書き続けることがペンを執る者には何よりも大切なことだ」と97歳の日記に書き残している生涯現役作家であった。師・夏目漱石、初恋の人・中勘助、夫・野上豊一郎、田辺元との老年の恋、友人・宮本百合子、78歳に完結した『秀吉と利休』、のことが書かれている。野上の人となりを知るのによいテキストだ。 2012/09/25
kiriya shinichiro
0
有名作家だけど、今まで野上彌生子の実作を読んだことなくて、とりあえず「どんな人なんだろう?」というのが知りたくて、手にとってみた。 結論からいうと、晩年の野上作品を読みたくなるという意味では、とてもよい評伝だと思う。当時の女流作家の交友関係や立ち位置もそれとなく書かれてるし。作家をベタ褒めしたり、変なかばい方をするより、こういう風に、ユーモアを交えて書いてもらった方が、僕はありがたいな。2014/10/20