内容説明
しんと静まりかえった心の中のいちばん深い場所で、たしかに、それは起こった。生きること、死ぬこと、そして眠ること―1995年2月、あの地震のあとで、まったく関係のない六人の身の上にどんなことが起こったか?連載『地震のあとで』五篇に書下ろし一篇を加えた著者初の連作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とくけんちょ
60
村上春樹の短編はキレがいい。ここで幕引きかというタイミングでさっと、後腐れ感ゼロの尻切れのよさ。いかにキレの良い短編をかけるかどうかは、本当に作者の力量によると思う。変にまとめようとしすぎると逆にまとまらず、作者の終わりたいタイミングで、それでいい。ufoが釧路に、アイロンと続けば、心ごと持っていかれる。2020/09/27
sakap1173
56
阪神大震災をテーマとする6つの短編。 震災は各々のストーリーの中で、間接的に、或いは暗示的に描かれている。 最後の書き下ろし、"蜂蜜パイ"がすっと胸に沁みるような作品でした。 久しぶりの村上さん。やはりいいです。 定期的に読みたくなりますね。2022/04/14
踊る猫
35
遠い地で起きた阪神大震災を残響として聞きながら、人はしかし日常生活の中に戻っていかなければならない。その場合、とりあえず「今ここ」に存在する日常生活と「遠く」にある異常事態が共存したカオスのような世界を私たちは生きることになる。春樹がこの短編集で目指したのはそうした、「社会」の底が抜けた「世界」を晒すということではなかったか。春樹らしいセックスやスノッブな細部も控えめに綴られたこの作品集はそうした「世界」の崇高さ、神秘を指し示していると思った。真っ向から描くだけが震災のアクチュアルな表現になるとは限らない2023/03/02
林 一歩
35
著者の好きな短編は他にあるが、この短編集に収められている作品群の精度はどれも極めて高い。特に、表題作はperfect!2014/12/08
かおりん
30
地震のあとの出来事や生活を書いた連作小説。絶望感とも空想癖とも捉えられる不思議な感覚になった。「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」が読みやすかった。2022/02/12