出版社内容情報
皇位からひたすら逃げ続ける皇子。首都機能を喪った東京で彼が出会ったのは、自ら皇帝と名乗る不思議な男だった。異色ファンタジー。
内容説明
首都直下巨大地震のAI予告がひょっこり産み落とした異物。退避を拒んだ住民を前に、皇帝就任を宣言する男が現れたのだ。究極の凡人か、はたまた超人か。その従者となることを申し出た青年は、当初の目的を忘れ、皇帝とともに破滅へのカウントダウンを待つことを選んだ…。その時、もう一人の「陛下」は??タブーに挑む空前のファンタジー。
著者等紹介
暖あやこ[ダンアヤコ]
1978年、東京生まれ。上智大学および同大学院経済学研究科に学ぶ。放送作家、元明海大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
信兵衛
32
読み手の好み次第でしょうけれど、着想、意外性、展開の巧妙さと、私にとってはとても面白い、魅力ある作品でした。2020/08/15
chatnoir
16
これもジャケ読み。一人の青年の成長録なのかな。架空でも宮様を描くというのはタブーじゃなくなったんだ...新世代だな(笑)日本でなければ、東京でなければいけなかったのかな。カラス、皇帝、巨大地震、ハープのトラウマ治療法と様々な事柄をうまい具合にまとめている。烏が細かく描きこまれた国債の挿絵がみたかったなぁ。2020/09/23
makoto018
7
図書館の新刊コーナーで見つけたなんだか気になる本。AIの地震予測を受けて東京脱出が進み、空っぽになった東京。そこに山高帽をかぶった男が現れ、東京帝国の初代皇帝を宣言する。東京に残る人間は次第に皇帝に傾倒していくが…。天皇家の一族として生きること、地方が東京に寄せる複雑な感情、など様々な要素がある作品だが、そうした装いを取っ払うと、あとに残るのは青年の成長譚という、古典的かつ普遍的なテーマだった。父たる天皇が、皇帝からの手紙を皇太子に渡すくだり。天皇としての大きさ、父としての優しさが現れたよいシーンだった。2021/03/25
Masa
4
物議を醸しそうな、挑戦的な題材だけど、「銀杏が、色を変えておる。」とか色々心に沁み入る、味わい深い文章。なかなか悪くない。2020/09/06
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
2
小品と云える部類かもしれないが、こんなに感動してしまうなんて、我ながら驚きだ。「皇帝」のイノセントな道化ぶりだけでなく、物語全体に、繊細な哀しみが漂っている。哀しくて、哀しくて、何度泣いたかわからない。カラス、銀杏と棕櫚、日向地震、田中正、高見結島、和歌山、四斗辺稲蔵、赤尾礼司といった名前や言葉の裏の寓意を詮索するのも愉しいと思う。2020/08/31