出版社内容情報
忘れられないのね。可哀そうに。17歳の冬、僕らが眠るホテルは倒壊した。あの地震がなければ初体験の相手は彼女になるはずだった。
内容説明
予備校仲間と勉強合宿のさなか、阪神大震災で初恋の相手とともに、倒壊したホテルに生き埋めとなった僕は、ひとり生還したのち、失われた彼女の記憶を抱えて生きていた。20年後、Facebookを通じて再会した大学の旧友は、そんな僕に、「今日は美希子を呼んでいるんだ」と持ちかけた。表題作と響きあう2つの短篇併録。
著者等紹介
上田岳弘[ウエダタカヒロ]
1979年、兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業。2013年、「太陽」で第四十五回新潮新人賞を受賞し、デビュー。2015年、「私の恋人」で第二十八回三島由紀夫賞を受賞。2016年、「GRANTA」誌のBest of Young Japanese Novelistsに選出(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
107
これは初めての作家さんでしかもどこかで評価されていたので手に取ってみました。最近の小説ということなのでしょう。若干SF的な感じもありますが現代小説なのでしょう。阪神大震災とその後の20年たった後での様々な感情や様子をSNSやフェイスブックでのやりとりなど書いているのですが私にはあまり実感がありませんでした。やはり年齢を実感しました。2018/04/30
巨峰
77
「表題作」ソーシャルネットワークにより過去にアクセスする主人公とその友人。SNS時代の人のつながりを描きながらもそこにとどまらないきわめて現代的な文芸作だと思います。展開もなかなか面白く予想もつかなくて良かったです。電波を飛ばしながらも肉感的で。。エヴァやガンダムシリーズとの相似も感じました。今後注目したい作家さんだと思います。(併録の2つの短編はよくわかりませんでした。)2017/11/05
キク
59
「『男性はこう考えるのか』と、レビューを読んで参考になります」という言葉をかけていただいたことがある。すごく嬉しいんだけど「僕の感想に一般性や普遍性は全然ないし、内容としても大したことはない。これを一般的男性の意見と認識することは、あまりよくないんじゃないか?」と申し訳ない気がしていた。ある種の階層に属する男を理解するには、この表題作を読めばいいと思った。僕の同級生からは医者も弁護士も東大教授も開高健賞受賞作家もでた。そんな男達を横で見てきた者として、この小説で描かれる男達の佇まいは、すごくリアルだと思う2023/05/03
そうたそ
34
★★★☆☆ 今までの作品とは少し異なる作風。阪神大震災にて恋人とホテルにて生き埋めになった僕。自分のみが生き残ってしまい、彼女の記憶を抱えて生きている。そんな中久々に出会った旧友は死んだはずの「美希子(=彼女)」と称する人物を次々と彼にあてがうこととなる。SNSがキーポイントとなる本作。人類的・世界的視点からものごとを俯瞰的に見る「神ポジション」語りもまた本作のキーワード。SF色は今までよりも薄く話もとっつきやすい。ただその言わんとしていることが分かるような分からないような感じがするのは従来どおり。2017/09/28
Tαkαo Sαito
30
ニムロッドが好きすぎて上田さんの本2冊目のトライ。小難しく、かなりメタ的で、村上春樹に近い感じがした。著者はIT系企業の役員もやっているということもあって、ニムロッドでもそうだったが現代社会、ビジネスシーン等のリアリティ描写は凄く上手いと思った。「塔」という、不可思議な人工物を、とことん掘り下げていくと、ここまで物語は壮大にできるのかと読み終えて放心気味。玄人向けもしくは、変わりもの好きな人にはオススメできそう…2020/12/30