出版社内容情報
留まることのない欲望の果て、人類は金の生成と不老不死を実現する。はたしてそれは希望なのか、悪夢なのか。大型新人デビュー小説!
内容説明
アフリカの赤ちゃん工場、新宿のデリヘル、パリの蚤の市、インドの湖畔。地球上の様々な出来事が交錯し、飽くなき欲望の果て不老不死を実現した人類が、考えうるすべての経験をし尽くしたとき、太陽による錬金術が完成した。三島賞選考会を沸かせた新潮新人賞受賞作「太陽」と、対をなす衝撃作「惑星」からなるデビュー小説集!
著者等紹介
上田岳弘[ウエダタカヒロ]
1979年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業。2013年、「太陽」で第四十五回新潮新人賞受賞。2014年、同作が第二十七回三島由紀夫賞候補作になる。『太陽・惑星』が初の著書となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
89
まるで修行のごとき読書体験。確かに日本語で書いてある。文章の意味もわかる事はわかる。が、時系列も場所も主体も錯綜を繰り返し、文章が頭の上にどんどん上滑りしていく。意識が遠退く。そうこうしているうちに、デリヘル嬢に迫る大学教授、というえらく卑俗な冒頭からの、あの太陽で錬金術を遂行の高みまで、まるで竜巻に巻き込まれたように持ち上げられていた。何という飛躍の因縁。ば〜ん。撃沈。2016/02/23
harass
88
芥川賞受賞作「ニムロッド」で知った作家でこの本を借りた。デビュー作の短編「太陽」を読む。独特な超越した視点からの群像劇と世界の終わり。資本主義の隠喩かと思ったが、まじでそのまんまであることに驚く。借りて読み飛ばすのがもったいなく、残りの「惑星」はじっくり読みたいので購入する。文庫がないのはどういうことか。海外小説を読んでいるような印象があり、そういう水準に近いのではないかと。おすすめ。2019/11/04
Mumiu
49
春日たちの生きる人類第一形態末期の時代、そして田山ミシェルの生きる人類第二形態末期の時代。それぞれ第1主題、第2主題と音楽のように連綿と描かれる。田山ミシェルは体験装置を使って第一形態の時代を感じながらヒトの行く末を構想する。(太陽)最強人間(すべてを飲み込むヒト)と最終結論(すべてわかってしまうヒト)、 意思とは別の大きな流れのようなものを感じた。(惑星)公平で健康な世界。この人類補完計画にもハーモニーにも重なる未来観、わたしたちは個であることの意味を問われている。2016/06/09
いちろく
43
紹介していただいた本。“太陽”と“惑星”の2篇からなる作品。太陽に圧倒された。読む側を置いてきぼりにして振るいに掛けている様な群像劇なのに、なぜ惹かれるのだろう? 状況説明が少ないだけでなく切り替えも極端過ぎるのに、作品自体を魅力的に感じられる点が自分の中で消化出来ない。 敢えて描かない事で読む側に委ねている寄りも、基から描かない事を昇華させた印象。それが物語全体にも及びスケールアップして行く中で、ジャンルというカテゴリに当てはめる事が矮小と思えるぐらい垣根を超えていく。凄いわ。紹介感謝!2019/03/03
そうたそ
43
★★★☆☆ 純文学もここまできたかと思わせる、可能性のようなものを感じさせる作品。作者曰く、「一人称・神視点」というものが今までありそうでなかったことに想を得て書いたのがこの作品(=「太陽」)とのこと。視点や時系列、場所がいったりきたりで最初は戸惑うが、そこはじっくり読み進めるのみ。終盤においては話は相当な規模のものになり、地球レベルで話が進む。読み終わって結局何だったのか、という感想は持ってしまうが、満足感は十分とある。SFとしても読めるし純文学としても読める作品。併録の「惑星」は理解に至らず。2015/07/27