出版社内容情報
自宅、被災地、保育園、スタジアム――様々な場所での曖昧な?がりが世界を微かに震わせる。海外でも注目の作家の現在を映す作品集。
内容説明
豪雨災害に見舞われた地区にボランティアとして赴いた私がふと目にした、花の世話をする住人らしき女性。その周りが小島のように見えて、違う時間が流れている―さまざまな場所で出会う何気ない出来事をつぶさに描いた中短篇の他、広島カープと広島の人々の特別な関わりをテーマにした奇談連作も収録。いまもっとも期待される作家の現在を映し出す14篇。
著者等紹介
小山田浩子[オヤマダヒロコ]
1983年広島県生まれ。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2013年、同作を収録した単行本『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。2014年「穴」で第150回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
48
ありふれた日常の一コマに溶け込んだ寓意性、不穏さに心がざわつく。どの作品も独特な流れとリズムを持つ文章によって、歪んだ世界に飲み込まれるような感覚を味わった。いずれも甲乙つけがたいが「ひよどり」「土手の実」「園の花」「かたわら」が特に良い。そして、もちろん広島カープの3作品も。読む前は、面白おかしいエッセイ的なものを想像していたが、予想以上に力強い文学作品で思わず唸った。この作家の”くせ”が苦手な人にも一押しの作品である。とりわけ「異郷」の不条理劇めいた容赦ない描写は一読の価値あり。2021/05/02
愛玉子
43
描かれるのは身の回りのこと、ちょっとした会話、植物や珍しくもない小鳥、犬や猫。ありきたりの日常の底流に薄暗い何かがゆらめき、それが居心地悪くぞわっとさせられる。他の人たちには当たり前に見えている何かが、自分だけに見えてないような不安。「ひよどり」の噛み合わなさ、「ねこねこ」の不気味さ、何かを踏み間違えてしまいそうな危うさがある「かたわら」が特に印象に残った。そして小山田さん、広島カープがとてもお好きなんだな。そこだけ揺るぎない正義に貫かれている感が面白い。「異郷」の不条理な怖ろしさにはちょっと笑いました。2021/07/03
ゆきらぱ
35
右上端から左下端までびっちり書かれている文を目で必死に追いながらも楽しめた。会話が面白い。幼ない女の子はほんとにこんな感じに平仮名混じりに聞こえるたどたどしい話し方でしっかり意地悪が言えるし、世のお姑さんておばあちゃんがダッコしてあげる、って言って孫に断られると「あーらまーあそーお」と時短で上手に不満を表しそう。広島とカープの話もめちゃくちゃに面白かった。そんな中で一番気になるのは「かたわら」のすみれさん。すみれさんどうしているかなー2022/08/03
なっく
35
会話もすべて改行なくビッチリ書かれており、意外とボリュームのある短編集。動物がモチーフの作品が多く、しかも淡々と描かれているところに好感が持てた。しかしなんと言っても最後の方の連作は、広島カープ愛を題材にしただけで◎!家族にもよくバカにされるけど、本当にカープが生活に密着していて日常の一部なんだよなー。懐かしい選手の名前がたくさん出てきてじーんとなった。2021/12/04
marryparty1
28
初読み作家さん。14の短編が収録。改行がほとんどないので目が滑りそうと思いましたが、区切りどきがないので一気に読んでいたらなんだかその書き方が内容と合ってると言うか、面白い。登場人物が自分に似てると共感したり、ラストで想像をかきたてられたりしました。動植物の話がほとんどですが、【異郷】は広島に住んだ事があるので笑いました。広島人と話す時はカープの話をしておけば間違いないと言われたのを思い出しました。同じくカープ話の【継承】【点点】あとは【ねこねこ】【おおかみいぬ】【けば】などが好きでした。2021/06/03