出版社内容情報
何があっても、生き延びる。光に守られて、前を向いて生きる――草木や花々、鳥の声。生命の力に支えられた物語。待望の長篇小説。
内容説明
帰って来ない母を“とわ”は一人で待ち続ける。何があっても、前を向いて生きる―。草木や花々、鳥の声。生命の力に支えられ、光に守られて生き抜く“とわ”の物語。
著者等紹介
小川糸[オガワイト]
1973年生まれ。2008年『食堂かたつむり』でデビュー。2010年に映画化され、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
582
小川 糸は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、タイトルや表紙のほのぼのとしたイメージとは異なり、究極のネグレクトからの生還&再生物語の秀作でした。前半は、ホラーかと思いましたが、とわ改め十和子が何とか幸せになって良かった。今年のBEST20候補作です。 https://www.shinchosha.co.jp/towanoniwa/ 2020/12/03
ウッディ
415
全盲の少女・とわにとって、母と二人で暮らす家の中だけが全ての世界、自分を守ってくれる優しい母がいれば、何もいらないと思っていた。けれど、母が去った時・・?大好きな母からの愛を感じ、ほのぼのと描かれているはずの少女期に漂う不穏な雰囲気は、ホラーのような恐ろしさがあった。そして、多くの人の助けを借りて立ち直っていく後半は、希望に溢れた物語になっていました。母に連れられて10歳の誕生日に行った写真館を、20年後に盲導犬と訪れるシーンにウルウルし、絶望しなければ幸せになれる、そんな勇気をもらえた気がした。2021/03/05
Makoto Yamamoto
328
好きな作家の一人なのだが、今回はこれまでと違った前半分で驚いた。目の見えない少女が健康な時の母と過ごした時と、その後ゴミ屋敷と言われる状態になっても、生き延びた少女。 その後は小川作品になってホッとした次第。 始めと後半はメルヘンを感じいい気持で読み終えることができた。2021/05/05
旅するランナー
327
盲目の女の子に起こる、絶望と希望。生きることへの渇望。庭の木々による寄り添い、黒歌鳥合唱団による朝の目覚めの歌、人形ローズマリーによる勇気付け、盲導犬ジョイの微笑みに囲まれる、幸せへの熱望。そして物語は命の恩人、出会いは前進への糧となる。「どれだけ言葉の向こう側に広がる物語の世界と親密に交われるかが、読書の醍醐味なのだ」ってことも教えられる。ショッキングでハートウォーミングなストーリーテリング。世界の醜さと美しさを見せつけられる、永久に尊い一作。2021/04/26
とろとろ
308
この作家の最新作というだけで何の予備知識もないまま読み始める。未熟児網膜症で視力を失った女の子が、物心がついた頃から母親に捨てられ通りすがりの人に発見されるまでの25年間、ゴミ屋敷と言われるまでに荒れ果てた一軒家に一人で住んでいたことなどが後に判明するという凄惨な事件が、主人公の目線で語られる。本人にとっては、過去が辛いとか、発見された後の暮らしはとても幸せだとか、そんな事は一切無くて、ただ淡々と現在がある。「ライオンのおやつ」にも共通しているような著者の人生観みたいなものが感じ取れる話だったように思う。2021/02/02