内容説明
ローマの真の偉大さの源泉は、インフラストラクチャーの整備にあった―。街道、橋、水道のハード・インフラと医療、教育のソフト・インフラの両面から「ローマの本質」を描き尽くした渾身の一冊。
目次
第1部 ハードなインフラ(街道;橋;それを使った人々;水道)
第2部 ソフトなインフラ(医療;教育)
巻末カラー
著者等紹介
塩野七生[シオノナナミ]
1937年7月東京に生まれる。学習院大学文学部哲学科卒業後、63年から68年にかけて、イタリアに遊びつつ学んだ。68年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェザーレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。82年『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。83年、菊池寛賞。92年より、ローマ帝国興亡の一千年を描く「ローマ人の物語」にとりくみ、一年に一作のペースで執筆中。93年、『ローマ人の物語1』により新潮学芸賞。99年、司馬遼太郎賞。2001年、『塩野七生ルネサンス著作集』全七巻を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
69
これまでの歴史物語は一端中断して、ローマ帝国のインフラについての詳細な説明の巻。「すべての道はローマに通ず」といわれてはいるが、実は、すべての道がローマから延びているといった方がいいのかもしれない。ローマ帝国の街道は、ローマからいかに早く領土の端まで行けるか、のために作られた軍用道路だった。すごいのは、その技術だが、それを国費で作って、どれだけ費用がかかっても通行費は一切取らなかったということだ。主目的が軍事用だからなのだろうが、一般人からも通行料をとらないとは、驚くべき国だ。2021/06/05
James Hayashi
35
ほぼ同時代、万里の長城に対しローマは街道を敷設した。総延長は8万キロを超える。人間の血管の如く街道網を作りハードだけでなくソフトな面でもローマに影響を与えたという。「ローマ軍は兵站(ロジスティックス)で勝つ」兵士へのベストな環境づくり。安全保障のベースとなった。*主要街道の複線化(複数の選択肢を持つ)、直線で山や谷を避け平坦、深さ1mに及ぶ砂利や石、敷石舗装、歩道と車道の区別、排水溝、樹木の伐採(根の侵食を防ぐ)、不断なメンテ、なんと高度な文明と言えまいか?続く→2018/01/12
kk
28
他の巻とは違って、経年記述ではなく、ローマのインフラに関するワンポイントの解説です。筆者は巻頭で、読みにくいかもしれないけど頑張って付き合って貰いたい、みたいなことを書いてらっしゃるけど、なかなかどーして、こーゆー題材であるにもかかわらず、かなり良い感じで読ませて貰えました。受け止め方はもちろん個人差があるんだろーけど、古のローマの人たちのインフラ整備にかける熱い思いに、ちょっとだけでも触れることができたよーな気がします。2019/01/23
俊
22
「すべての道はローマに通ず」のサブタイトル通り、道路を始めとしたローマのインフラについて語られる巻。ローマの街道は敷石で舗装された「本線」の全長が8万キロ、砂利舗装の「支線」も含めると15万キロにもなる壮大なもの。このローマ全土に張り巡らされた道路網や都市の水道、大浴場等のインフラは各地域を大きく発展させた。そしてそれらは、属州を単なる被支配地域からローマとの運命共同体へと変える大きな役割を果たした。このローマ型の大きな公共事業の比較対象として中国の万里の長城が挙げられている。2014/05/04
ロビン
21
10巻は前後の巻と趣向を変えてあり、丸々一冊エッセイ風にローマ世界のインフラストラクチャー(橋、道路、水道などのハードなものと、医療、教育などのソフトなもの)について書かれている。あの有名なラオコーン像が公衆浴場に置いてあったものだというのには驚いた(ローマの庶民は浴場を「われわれ貧乏人のための宮殿」と呼んだ位立派な施設だった)し、ローマ帝国には大病院も公立の学校もなかった―キリスト教の普及と共に医療と教育が公営化していくーというのも、他の巻で学んではいたが、ローマ人の価値観を反映していて面白く感じた。2022/08/01