内容説明
静寂のなかに佇んで対峙するとき、倒木の上に育つえぞ松が屋久島の巨杉が、いのち終えてなお美しい檜が、秘めた感情を語り始める…。生命の根源に迫る名エッセイ。
目次
えぞ松の更新
藤
ひのき
杉
木のきもの
安倍峠にて
たての木よこの木
木のあやしさ
杉
灰
材のいのち
花とやなぎ
この春の花
松楠杉
ポプラ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クリママ
46
木は好きだ。もちろん幸田露伴ほどではないけれど、やはり植物が好きだった父から、機会あるごとに草木のことを聞いた。昔は子供たちは自然を相手に木や草で遊び、親しんでいたけれど、今は違うものを見ているのが残念だ。木を真上から見ると全ての葉に陽が当たるように葉がついている。陽が当らない枝葉は枯れていく。日照を阻害され、それでも生きてきた木をアテと言う。木材としては使いもにはならないが、その話が興味深かった。ただ、全ての話が生きている木についてだったらよかったのに。材木になった木の話はこの中にあっては哀しかった。2017/06/06
seacalf
44
藤と檜の話が秀逸。父露伴からガマ口を預かり娘を連れて植木市へ行ったエピソードが同じく子を待つ身に沁みた。読んでいるうちにきっと藤の花を見に行こう、活気あふれて立っている檜とねじくれた檜を見に行こうという気分にさせてくれる。木が纏っている樹皮を着物に例える独特の感性。だが後半はやや感傷寄りになる描写が多く、木は生きていると話す奈良の兄弟棟梁の話や、身にしみる一本立の老木の話など作者ご自身より見聞きした話の方がストンと腑に落ちた。樹木本と言えば『野生の樹木園』が忘れがたい。他の作品にも読み比べてみたくなった。2024/02/20
ひめぴょん
16
現場で実際に見たり、触れたり、感じたりしたこと。ひとりではなく、いろいろな案内人と一緒に森やいろいろなものを見ることによって、自分だけで見るのとは違う視点で見ることができる。そして、それをきちんと言葉に表してくれています。ただ、それをどういう表現にするかはそれぞれ違うのだと思う。幸田文さんの文章は木に対する愛と小気味よさを感じます。きりりとした文章。以下は文中引用とミニ感想です。「」内はタイトル、文中引用、→ ミニ感想という流れ。 「えぞ松の更新」倒木の上に育つ。しかし、それでも弱いものは消える。木はま→2023/08/13
貧家ピー
8
映画「PERFECT DAYS」から手に取った。樹木を愛でる気持ちは父の影響か、えぞ松、杉、檜、木材と木に対する愛情、気持ちが伝わってくる随筆。ページを捲る度に森や林に足を踏み入れた気になった。宮大工 西岡兄弟の、材を簡単に死に物扱いするのは承知が浅いや「死んだ木」と「木の死んだの」は違うという感覚などが興味深かった。倒木を見かけることがあれば、今までとは違う目線で見られそうだ。2024/03/03
田中
8
映画「Perfect days」作中に出て来たので図書館で借りた。1冊まるまる木についての考察。木についてこれまでそれほど考えたことはなかったから面白かった。読書をすると、こう世界が広がる、見方が変わる、そんな喜びを感じる本だった。2024/02/21