出版社内容情報
コロナ禍の世界を逃れ心中の旅に出る若い男女を描く表題作や、臨界状態の魂が暴発する「ストロングゼロ」など、返り血を浴びる作品集
内容説明
心を病んだ恋人との同棲に疲れ、自らも高アルコール飲料に溺れていく(『ストロングゼロ』)。職場の後輩との交際にコンプレックスを抱き、プチ整形を繰り返す(『デバッガー』)。夫から逃避して不倫を続けるが、相手の男の精神状態に翻弄される(『コンスキエンティア』)。生きる希望だったライブがパンデミックで中止、恋人と心中の旅に出る(『アンソーシャルディスタンス』)。ウイルスを恐れるあまり交際相手との接触を断つが、孤独を深め暴走する(『テクノブレイク』)。生きる苦しみに彩られた全篇沸点超えの作品集。
著者等紹介
金原ひとみ[カネハラヒトミ]
1983年生れ。2003年、『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。2004年、同作で第130回芥川龍之介賞を受賞。2010年、『トリップ・トラップ』で第27回織田作之助賞を受賞。2012年、『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。2020年、『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
308
金原 ひとみは、新作中心に読んでいる作家です。本書は、壊れた女たちの連作短編集、どの作品もタイトルどおり密で、ソーシャルディスタンス取れていません(笑)オススメは、表題作『アンソーシャルディスタンス』&『テクノブレイク』です。 https://book.asahi.com/article/14369706 【読メエロ部】2021/06/22
ゆいまある
148
コロナ禍になってすぐ、仕事で世話になってる人から「セックスしよう」て連絡来た。会うな、接触するなと言われる中のセックスは背徳感満載で良さそうだなと思ったのは私だけじゃ無い筈だ。依存を扱った6つの短編、後半2編がコロナ禍を書いたもの。閉塞感、絶望、人がバランスを崩していく過程がリアル。ディテールの書き込みが凄まじくて、金原さん、才能だけじゃなくてただならぬ努力の人だと思わされる。次作も楽しみ。コロナ初期だからか、死の恐怖が色濃くて、ああそうだったと思いながらも暗い気持ちになる。2022/01/30
machi☺︎︎゛
147
金原ひとみさんは合わないと思っていたけどこの本はすごく面白かった。ストロングゼロ、デバッガー、コンスキエンティア、アンソーシャルディスタンス、テクノブレイクの5編からなる短編集で、どれもなかなかイタイ女の子が主人公。自己肯定感が低く、何かに依存する事で何とか均衡を保っている。私も若い頃はそんな事あったなーと思いながら、主人公達に過去の自分を投影しながら読んだ。でも年をとったらどうでもよくなった。そんな意味では年をとるのも悪い事ばかりではない。2021/12/27
モルク
145
5話からなる短編集。主人公の女性たちはいずれも酒、恋愛、美容整形、セックスに依存し、次第に深みにはまっていく。もがけばもがくほど(本人たちはさほどもがいているようには見えないが)蟻地獄のように際限がない。誰か、彼女たちの孤独に気づいて止めてあげて!苦しかった。でも1話目の「ストロングゼロ」酒に依存するユキさん、いくら容器を移しかえても会社の中、仕事の合間はまずいでしょ。マスクをしていても、絶対臭いや口調でばれるって!本に向かって注意してしまう私がいた。2021/11/28
ちゃちゃ
123
自分という存在の脆弱性。この世に生きる価値がある存在だと確信が持てない生きづらさ。それが依存へと結びついてゆく。5編の短編中の2編がコロナ禍を取りあげたものだが、他者と繋がりにくい状況下にあって、その脆弱性はさらに顕在化する。他人との距離をうまく取れずに孤立し、今生きているという実感が得られずに自己否定に向かうしかない苦しさ。アルコール依存だとかセックス依存だとか、「自分の力では制御できない獰猛な欲望」に従い弱い自分のまま生きるしかない。金原ひとみの筆は鋭く痛切で安直な希望は描かないが、真摯で嘘がない。2022/05/18