内容説明
「出張して本を読みます。文学書、ノンフィクション、その他何でも」幻想的熱情、性的憧憬、頽廃的媚薬―どんな本でも美しい声で朗読するマリー=コンスタンス。車椅子の少年にモーパッサンの官能的な短編を、革命好きの女伯爵にマルクスを、多忙な実業家に愛のレッスン付きで教養書を。だけど老判事が強要した「ソドムの120日」は…。マリーが体験する不思議な危険な《愛の時間》。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mina
53
魅惑的な声を生かし本の出張朗読を始めたマリーは、車椅子の少年 伯爵婦人 親が忙しい少女 欲求不満の中年社長のもとに出向き、次第に朗読以外の望みにも応えることに。情にほだされ、愛情を抱き、警察に呼び出され…でもマリーが自分の置かれた状況を楽しんでしまっているところがいいですね。「私と愛し合いたいならまず読んでから」には笑えました。依頼人にぴったりの本を選び言葉一つ一つを口と身体から発する、朗読の楽しみの1つです。朗読作品 モーパッサン ボードレール マルクス ルイスキャロル サドetc.楽しめました2015/01/26
美羽と花雲のハナシ
31
「出張して本を読みます。文学書、ノンフィクション、その他何でも」そんな広告が張り出されたら、私も自宅に朗読者を呼んでしまうかも。作中に登場するのは、モーパッサンの『手』、ボードレールの『悪の華』、キャロルの『不思議の国のアリス』、マルクスの『経済学批判要綱』、そして、サドの『ソドムの百二十日』。朗読者のマリーは美しい声で依頼主を魅了する。本を朗読する事で、本来孤独な作業である読書に禁忌を運び込む。少年の心を温め、老婦人の議論に耳を傾け、青年に特別なレッスンを施す。大切な人に本を朗読してあげたくなる作品だ。2013/06/22
毒兎真暗ミサ【副長】
13
【映画】少し古めかしい仏の現代劇中劇。下級層の女性マリーが「朗読者」を始め、色々お宅を訪問する。依頼主は車椅子の青年、将軍の未亡人、ある社長……と様々で、本もモーパッサンやマルクスと多彩なのだが、その内容と大人の事情が横行し、ブラックユーモアと皮肉の応酬が痛快。映画「アメリ」を彷彿とさせるテンポ(しかし恐らくこちらが本家)や妖艶なシーンが軽快且つ爽やかで、マリーの行動力も「それやっちゃうよね〜」と童心に帰る事間違いなしの茶目っ気満載!女性の深みある可愛さを知るならこの作品!!是非とも理想像を変えて下さい。2022/06/08
渡邊利道
8
魅力的な人妻マリーは、友人にそそのかされ、他人の家を訪れて朗読する仕事を始める。ところがお客は変人ばかりで、という物語。コケティッシュで、皮肉なユーモアが効いていて、淡々と進む大人の雰囲気のある洒落た小説で、とても軽く楽しく読めるのでおりに触れてというかちょっと煮詰まったときの気分転換についつい読み返してしまう。朗読=引用されるのはモーパッサン、マルクス、クロード・シモン、ボードレール、そしてサド。映画版も面白いのでオススメ。2018/09/25
topo
7
どんな本でも魅惑的な声で朗読する主人公。個性的な依頼者たち。仏文学らしいしっとりお洒落な雰囲気から一転、不可思議で滑稽な場面の数々。圧巻はサドを読ませる老判事。 仏語は聞くより聴くというイメージ。 どんな書物も美しい音を奏でそう。五感が喜ぶ作品でした。 2019/05/23
-
- 和書
- 分子生物学 (第2版)