内容説明
好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。
目次
1 少女時代(わたしの子ども時代;フリント家での奴隷生活;奴隷が新年をこわがる理由 ほか)
2 逃亡(プランテーション;逃亡;危険な日々 ほか)
3 自由を求めて(北へ!;フィラデルフィア;娘との再会 ほか)
著者等紹介
ジェイコブズ,ハリエット・アン[ジェイコブズ,ハリエットアン] [Jacobs,Harriet Ann]
1813‐1897。アメリカ合衆国ノースカロライナ州出身。幼くして両親と死に別れ、12歳で35歳年上の白人医師の家の奴隷となり性的虐待を受ける。苦難に満ちた自身の半生を記述した『ある奴隷少女に起こった出来事』が、刊行から約130年後のアメリカでベストセラーに
堀越ゆき[ホリコシユキ]
東京外国語大学、ジョージ・ワシントン大学大学院卒。現在、世界最大手のコンサルティング会社に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
274
「わたしは神が作った最も弱い生き物かもしれない。でも絶対に負けるものか。誰のためでもなく、自分自身のために!」不埒な医師の奴隷になったリンダ、卑劣な虐待に苦しむ彼女は他の白人男性の子を身篭ること15歳にして決意する。「奴隷制は、黒人だけでなく、白人にとっても災いなのだ」生まれる品位の堕落、悪事、不道徳に不屈の精神力で抗う『人生との戦争』が知的で聡明な文面で綴られている。長期の逃亡と潜伏の逆境の中、自尊心を保つ努力をし、苦しみに耐えた者同士の強い絆で自由を掴み取る様は感慨深い。人間の残酷と勇気を描いた実話。2020/04/25
ゆのん
212
品薄でやっと手に入れた。当時、小説と誤認され126年後に実話と証明されディケンズやドストエフスキーなどと並ぶ古典となった。1813年~の一人の少女の人生が描かれているが当時のアメリカ南部、黒人への奴隷制が当たり前に横行してる時代だ。読んでみると小説と誤認されたのも納得できる残酷さ、リンダの強さである。人間としての自由や尊厳の全く無い人生、リンダは生まれた時から奴隷だった。こどもの頃に読んだ「アンクルトムの小屋」や聖書の「ヨブ記」を思い出す。繰り返さない為にも沢山の人に読んで欲しい本だ。2017/08/18
ykmmr (^_^)
185
なんと言う事だ。本国アメリカというと、リンカーンの時代までの間、南部を中心に過酷な労働・人身売買、他の国の話も含めると、奴隷貿易なども入って来る。勿論、その辺りは頭に入っている。しかし、女性や子供の事は分かっているようで死角である。人身売買の為の妊娠・出産、部屋に何年も監禁され、小窓から子供の成長を見守る。この最低の苦しみを告白するのは本当に勇気がいっただろう。多分、『奴隷解放宣言』後なんだろうけど、何より彼女がそれから解放され、子供と共に、自分らしく生きれた事。ストックホルム症候群にならなかった事。2021/11/02
ケイ
163
奴隷の生活は、主人が代われば全く違うものとなる。地獄が果てにあるならば、中途半端な天国はみるものでないのだろうか。数年前に読んだ『アンクルトム』の中に、色んな黒人の話しがあって、この少女や祖母のような女性達がたくさん描かれていた。この作品が心打つものであることは間違いないが、新潮文庫の100冊とするのであれば、訳をもう少し読みやすくて欲しいと思う。もしくは、アンクルトムを100冊にいれてほしいと思った。2017/07/19
あきぽん
160
21世紀になってベストセラーになった、南北戦争前のアメリカの奴隷女性の手記。黒人奴隷の上に女性、ということで壮絶なパワハラ&セクハラを受ける。しかし彼女は無教育でも美しく賢く強く、主人である白人医師の妄執に絶対に屈しない。これは歴史上のアメリカの話、というより、差別と分断がすすむ21世紀の世界にとっても普遍的な物語であると思う。同様に、「ハックルベリー・フィンの冒険」もトランプ大統領誕生の理由がわかるのでおすすめ。2018/09/02