内容説明
英国情報機関内にどうやら「もぐら=二重スパイ」がいるらしい。情報工作本部長サミュエル・ベルは、自らの部下の内偵という屈辱的作業を強いられ、組織内での孤独感を深めてゆく。窮余の一策としてベルは部下の信頼度を試す「秘密指令」を作成。指令の遂行過程に組み込んだ巧妙なプログラムは、見事スパイを突き止めたかに思えたが…。連作短編に挑んだフリーマントルの異色作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
6
12の小編オムニバスかと手に取ったがそうではなく「ファクトリー」と称される英国諜報機関の工作本部長を主人公とする一連の物語であった。主人公は内部にKGBと通ずる者がいるとの疑いから何人かの職員を無駄に犠牲としてしまうのだが、小編中では目覚ましい諜報(訳者はこの言葉を嫌う旨後書きに述べるが無視したい)成果も上げる。最後のロシア皇帝と英国皇帝の通信を描く「皇帝の密書」は本作中の佳作と思うが、最終作でなされる潜入スパイ種明かしは出来すぎの感が強い。本作の後ソ連とその同盟は崩壊する。この分野の作品も昔語りとなった2020/11/03
Tetchy
2
「ザ・ファクトリー」に潜入した二重スパイの捕縛をテーマにした12の連作短編集。その内容は二重スパイの誤認、ロシアからの亡命者の話、潜入中の工作員の救出、ロシアへのスパイ派遣、首相のインサイダー取引疑惑事件、世界的経済壊滅事件、ロシア皇帝の末裔の話などヴァラエティに富んでいる。作品として面白かったのは「マネー・チェンジャー」、「テロリスト・ルート」、「皇帝の密書」、「尋問」、「暗号破り」の5編。しかしラストのどんでん返しは余計だった。こういうところが職人作家のいらぬサービス精神なんだよなぁ。2009/10/19
まー
0
51995/03/06