内容説明
酔っぱらうのが私の仕事だった。救いのない日々、私は悲しみの中に溺れながら性愛に耽っていた。倦怠や愚劣さから免れるために。私にとっての生とは、なにものも求めないことなのだ。卑猥で好色で下品な売女どもと酒を飲んでファックする、カリフォルニア1の狂人作家…それが私である。バーで、路地で、競馬場で絡まる淫靡な視線と刹那的な愛。伝説となったカルト作家の名短編集!
著者等紹介
ブコウスキー,チャールズ[ブコウスキー,チャールズ] [Bukowski,Charles]
1920‐1994。ドイツ生れ。父はアメリカ軍兵士。母はドイツ人。二歳のときアメリカへ移住する。1939年ロサンジェルス・シティ・カレッジに入学。創作科の授業をとる。’41年に大学離籍後は、アメリカ各地を放浪する。その間就いた職業は、皿洗い、倉庫係、守衛、トラック運転手、郵便配達人など。’44年短編が初めて雑誌掲載された。’52年から’70年まで郵便局に勤務しながら創作を続ける。その後、創作活動が旺盛となり、白血病で亡くなるまで50冊に及ぶ詩集や小説を発表した
青野聰[アオノソウ]
1943年東京生れ。早大中退。作家。’79年「愚者の夜」で芥川賞受賞。「女からの声」で野間文芸新人賞、「人間のいとなみ」で芸術選奨文部大臣賞。「母よ」で読売文学賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
428
巻頭の表題作を含む30からなるshort storiesを集めたもの。もともとがバラバラな媒体に発表されていたせいか、内容も様々。例えば表題作「町でいちばんの美女」のように、短いながらも本格的な小説もあれば、「15センチ」のような与太話めいたものもあるし、ブコウスキー本人が登場する私小説まがいのものもある。原文の文体はもう少し過激なのではないかと思われるが、訳文は大人しく品位を失わない(それがいいかどうかは微妙だが)。全体を貫流するのは、基底部にある希望を喪失した乾いたニヒリズムか。2021/04/05
ケイ
97
もっとハードボイルドな話、もしくはトム・ジョーンズ的なハチャメチャさを期待していたのかもしれない。期待とは違った。どの短編でも、登場人物達はあまりに救いがなく、滅入るような日々を送っている。なのに、ほんとうに堕ちてはいかないのだ。どこかそんな自分をシニカルに見つめながらも、決して生きるのをやめようとしない。読み手のこちらも、あきれながらも愛せずにいられないようなダメな男たちの話に溢れている。2014/10/22
蘭奢待
66
なんなんだこの作品は。すごい作家に出会ってしまった。訳も良いのであろう。無頼な雰囲気がよく出ている。通勤電車の中で開くのを躊躇してしまう過激な文章。作者、訳者はしてやったりと小心者の読者を笑っているだろう。2019/07/30
えりか
60
人生は悲しみまみれだ。アルコールやセックスで、一時の快楽を得られるかもしれないけれど、永遠に癒されることのない悲しみ。とらわれてしまったら、きっともう逃げることはできない。悲しみを悲しみと考えない賢い生き方はできなくて、真っ向から悲しみと生きていくしかできない繊細な男たち。そこに一つの哀愁のような切なさと痛ましさを感じる。「悲しみの中に溺れながら性愛に耽る。」絶望の中で倦怠感に襲われながら、それでも生きていく救いようのないどうしようもない男たちに格好よさと愛しさを感じる。2017/03/17
ずっきん
56
ど正面から、酒、女、セックス、糞、がなんのてらいも気取りもなく下品真っ向勝負で繰り出されてくる。元々のタイトルは『勃起、射精、露出、日常の狂気にまつわるもろもろの物語』ときた。けど、初っぱなの表題作でガッツリ掴まれてしまってもうどうしようもない。鼻を鳴らして「っとにもう、しょうがないね!」と他のも読んでいくんだが、このあけっぴろげの最低最悪の男(ブコウスキー)の愛くるしく切ないことといったら!ヘミングウェイも意識してたらしいけど、ウソでしょ? カッコつけないあんたの方が何百倍もマシさ!2018/03/27