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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ykmmr (^_^)
184
『ドレフュス事件』の被告の弁護と、その後の不運でも知られるゾラ。そして、彼はパリ社会とそこで生きる人生を良く知っていると思う。それを堪能させてくれる小説。悩んでいた者から逃げ、幸せな結婚をし、真面目に働いて生活していたのに、居酒屋(酒)という場所とその人物の再来により、アルコールを筆頭に、DV・不倫・虐待、それに蝕まれた自分を保つ為の贅沢や見栄。落ちるとこまで落ちて、転げて。最愛の者も失い。当然、誰1人幸せになれない結末に驚愕してしまう。2022/01/29
のっち♬
168
呑んだくれの夫と結婚して洗濯屋を開業したジェルヴェーズは元情夫の介入で生活が転落してゆく。目先の「無事平穏」を求めて乱倫に順応してしまう彼女には、貪欲を際限なく培養する資本主義の宿命に抗う素質がなかった。酒と暴力とセックスのスパイラル、モラルと家族の解体。子供の折檻場面は嗜虐的なまでに凄惨だ。加速度的堕落の中で著者は"酒のおかげ""きちんと倹約すればやっていける"と指摘しながら"道徳的な作品"として生きた教訓を提示している。苛烈な労働と貧困が齎す無知の毒を精巧な人物造形を通して掬い取った自然主義の代表作。2022/07/03
優希
108
19世紀のパリの人々の壮絶さを見たような気がしました。ジェルヴェーズはまじめに働き、洗濯女として慎ましい幸せを得たものの、転落していく様子に喜劇のような空気すら感じてしまいます。女主人から最下層への徹底した堕落から見て取れるのは、幸せや美しさを排除した物語でした。酒に溺れ、暴力に走る男や女、不幸の連鎖から退廃した香りが漂います。人格をも破壊する粗悪な安酒を出す居酒屋が象徴していると言えるでしょう。堅実に働き、輝いていたジェルヴェーズの精神が蝕まれていく様がリアルで鳥肌が立ちました。2015/07/28
ペグ
100
主人公ジェルヴェーズの人生は、山あり谷ありで、感情の渦に巻き込まれそうになる。19世紀フランス、パリの下町。下層階級の人々の暮らしがひしひしと伝わり、ずっしりと重い。何気ない日常など無いのかもしれない。頭の中はいつも忙しいのだ。酒に溺れ人の波から取り残されたジェルヴェーズの人生に深い溜息をつく。死を意識しながら生きようとする意志。何も持たず何も希求することの無い生き様に震えた。2020/02/04
のり
82
19世紀末のパリの下層階級の人々の日常を描き出した傑作。貧しかった洗濯女ジェルヴェーズは、技術も高く、自分の店を持つまでに成功したが、旦那の事故から、徐々に仕事に対する熱も冷め、暴飲暴食に走り堕落していく。真面目だった旦那も、仕事もせず朝から晩まで飲み続け、似た環境の仲間も巻き込んでいく。日本に比べ、文化も教育も進んだ先進国だと思っていたが、子供達に対する言動や体罰が酷すぎる。天上から再び下層に堕ちていく様は悲惨極まりない。そこまで飲みたいものだったのか…続編「ナナ」も読みたい。2017/03/23