新潮文庫<br> ローレンス短篇集

新潮文庫
ローレンス短篇集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 200p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784102070093
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

入江

7
「薔薇園に立つ影」がよかったです。腹を減らした夫のイライラから、夫婦の間にある結婚生活の亀裂を、なんとも美しく描いています。「彼女の日傘の色がクッキリと真紅に浮き出た(略)小さな蠅が一匹彼女の白いドレスの膝にとまった。それを見つめていると、薔薇にとまっている様に感じられた。」キューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』に近い気もします。(こちらの原作はアルトゥル・シュニッツラー『夢小説』らしいです)これ以外は、読み解くのに苦労しました。ロレンス面白かったよりも、「やっと読み終わったぁ~」という印象です。2015/09/29

こうけんどう

5
古い積読本。約60年前の訳出であり、旧漢字が多く、言い回しも古い感じがした。何より直訳的な翻訳が多く、意味を捉えにくかったことが残念。 編まれた短編で、女性が主人公のものは、因襲や世間の常識にとらわれていたところが、あるきっかけで自らの意志で自由あるいは生を求める姿が描かれており、面白く読めた。また、植物や花の色の表現や人物の目の表情が細かく描かれており、これを通して心理描写しているところが特長的であった。2019/10/18

關 貞浩

5
『プロシャ仕官』で描かれた大尉と従僕の関係はまさに今で言う"パワハラ"だろう。解説にある同性愛的なニュアンスはあまり感じられず、むしろ権力を基盤とした二人の人間の関係性の普遍的な歪み、そこから生じる憎悪によって錆び付いた鎖で互いを蝕み合うように結び付けられてしまった人間性の渇きを描いているように感じた。作者の文明批判による人物描写にはややステレオタイプなきらいはあるが、いずれの作品も舞台となっている自然の美しさと嫉妬の渦巻く内面の醜さとが対照的で、美しい旋律の裏側で不協和音が繰り返し奏でられているようだ。2018/03/15

關 貞浩

3
最後に収録されている2編、『馬で去った女』と『山間の十字架像』は、作者の主張である文明批判が反キリスト・ペイガニズムといった域にまで推し進められている。特に前者は、文明生活に食傷した白人女性の貴婦人が、鉱山主の夫の元を離れ野宿を繰り返し、単身インディアンの暮らす集落を目指し、やがて白人の神を放棄してチルチー土人の崇める土着の神々の生贄となるという物語で、こうした展開そのものが異端的でスリリング。言葉の通じない彼らに囚われてからの彼女の心の動きと孤絶感が絶妙で、彼女の澄み切った陶酔と無我の境地が垣間見える。2018/03/15

關 貞浩

3
『春の陰翳』の「見ず知らずの他人以上に、彼と彼女とは離れていた。」(P.101)という一文が全編を象徴している。かつての恋人ヒルダに対しサイソンが感じるこの乖離をはじめ、『太陽』、『微笑』、『馬で去った女』などの作品においても恋人同士や夫婦の間柄が、交際・結婚によって非人間的に(主に文明化された男=資本の束縛・支配によって)歪み、回復不能となってしまった様子が描かれている。『薔薇園に立つ影』では、フランクの妻がかつての恋人であった軍人の変わり果てた姿を目にし、夫に自らの過去の恋愛をぶちまける様子が印象的。2018/03/15

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