内容説明
精神医学者としてヒステリーの治療に携わり、精神分析の方法を確立、精神の深層の無意識界に光をあて、人間心理の源をさぐったフロイトの学説は、ひろく人文科学の諸領域、特に二十世紀文学に多大な影響を及ぼした。本書は、日常生活において無意識に抑圧されている欲求と“夢”との関係を分析、実例を詳査してその解釈により、人間心理を解きあかそうとする名著である。
目次
1 夢の問題の学問的文献
2 夢判断の方法―ある夢実例の分析
3 夢は願望充足である
4 夢の歪曲
5 夢の材料と夢の源泉
6 夢の作業
著者等紹介
フロイト[フロイト][Freud,Sigmund]
1856~1939。モラビアのフライベルク(現チェコ)生れ。貧しいユダヤ羊毛商人の子。ウィーン大学卒業後、病院勤務、大学講師を経て、ウィーンで開業医となる。人間の心の大部分は無意識の領域であることを発見、従来の催眠治療にかわる、自由連想法による治療技術としての精神分析を確立。その理論は社会的に反発も多かったが、徐々に浸透、20世紀前半の思想界、文学等に与えた影響は測り知れない。ナチスを逃れ亡命先のロンドンで病死
高橋義孝[タカハシヨシタカ]
1913~1995。東京生れ。東大独文科卒。九大、名大等で教鞭をとる。翻訳の他、評論、随筆でも高い評価を得た。『森鴎外』(読売文学賞)等著書多数
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感想・レビュー
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夜間飛行
39
今でこそ人間の想像力は無意識や性の領域に立ち入れるようになったが、20世紀初頭の人々は、本書をどう受けとめたのだろうか? 例えばある婦人の見た「箱の中で娘が死んでいる」という夢について、フロイトは子宮の死児、つまり中絶願望であると解いている。こんな説明を聞いて、大多数の人は倫理に反する考え方と受けとめたであろう。本書で特に見事なのはエディプス説とそれによるハムレットの解釈だが、それが見事であればあるほど、目を背けたかった人々の驚きと反感の大きさが想像される。この本を読んでフロイトの偉大さを改めて思った。2013/12/20
シルク
22
読むのにえらいこと時間かかった。この新潮文庫版、めちゃくちゃ字がこまい! 敗戦後、出版物のための紙が足りんくて、統制されてて、その頃の印刷物、1頁に極小の字でちまちまギュウギュウに刷られていたでせう。あれを思い出す…目が、いてぇ~(;;) 目は痛いが、中身は面白かった。前々から、読みたいとは思っていたのだ、この本。無意識ーー私でありながら、自分自身把握しきることの出来ない、私の知らない私。それを発見したのは、フロイトだよん、と。その「無意識」の発見を、ちゃんと知りたくてようやく手に取った。下巻へ、go!2022/02/17
Gotoran
19
夢を眠っている間の心理現象と捉え、心理学的観点から研究し、夢の内容を精神状態と関連付けた考察を、先行研究の引用と批判、フロイト自身による臨床経験等、様々な事例研究に基づき、展開してゆく。夢とは無意識による自己表現(願望充足)と説く。随所に織り込まれたフロイト自身の少年期、医者従事してからの名誉心や嫉妬心についての挿話、或いは神話や文学作品を引きながらの心理学的言及・考察がなされている。かなり難解であり、読了に時間がかかったものの、非常に興味深く読むことができた。次は下巻を。2012/10/14
ヴェルナーの日記
18
太古の昔から「夢」に関する事柄は、人間にとって少なからず大きな位置を占めてきた。その中で20世紀の精神分析・夢判断に大きな影響を与えた一書である。人間の根源(夢思想)にあるものは、性に関連するといったフロイトの得意とする分析だが、自分としてはユングのように、ただ性に関するだけでは片付けることできない普遍的なものが内在しているのではないかと思う。2013/03/19
Z
11
晦渋である。潜在思想が顕在夢に姿を変える方法に上巻では圧縮と移動という2つの例を挙げて終わる。圧縮とは潜在思想が有する複数の表象が顕在夢において一つの表象に合成されること。移動は強調の移動であり、潜在思想にとって主要なものが顕在夢にとっては些末なものとして扱われることで、抑圧による検閲を欺くことを目的とする。上巻はこれで終わり。いざ下巻へ 2018/03/05