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新潮文庫
大いなる遺産〈下〉 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 539p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784102030028
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

謎の人物から莫大な遺産の相続を約束されて、貧しい生活から一変して贅沢三昧の暮しにひたりきり、今や忘恩の徒となりはてた主人公ピップ。彼の前に、その謎の人がついに姿を現わした。彼の運命は再度一変する。痛烈な皮肉、豊かなユーモアと深いペーソスをたたえて、市井の人間たちの生活に息づく喜びと悲しみ、美しさと醜さを余すところなく描き、文豪後期の代表作をなす長編小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

308
ドストエフスキーやプルーストはディケンズの信奉者であったらしい。また、現代の作家では、大江健三郎の小説の何冊かで言及していることから、彼もまたディケンズの熱心な読者であるようだ。玄人好みの作家ということか。ディケンズはこれまでに『クリスマス・キャロル』しか読んだことがなく、こうした本格的な長編は初めてだが、私にとっては相当に難解な小説だった。個々の登場人物が、それぞれに固有の心的背景を抱えており、それらが「ないまぜ」のような小説技法で絡み合い展開してゆく。回想されたピップとエステラの「失われた時」は重い。2015/06/12

ヴェルナーの日記

271
下巻は少年ピップから青年ピップに成長し、主にロンドンでの彼の生活ぶりが描かれている。そして謎だったピップの『大いなる遺産』の真の後見人が名乗りでた―― 上下巻を読み終わって、先ず感じたことは”紆余曲折がありながら、とどのつまり万事は塞翁が馬”と言ったところでしょうか…… やはり著者・ディケンズのロンドンの街並みや魅力あふれる登場人物の描き方は卓越している。おそらくは新聞記者の経験から、観察眼がとても鋭かったことと思う。さらに良くも悪くもロンドンという街を、そこに住む人々も含めてこよなく愛していたと感じる。2021/10/19

やきいも

113
下巻では「多額の遺産を主人公のピップに与えた謎の人物は誰か?」という謎が解かれ、その人物と出会った後のピップの人生が書かれていく。ミステリー小説的な謎解きの面白さがあって面白かった。ストーリーの展開の面白さは現代の作家の方がうまいのかもしれない。しかし、文豪ディケンズにしか書けない華麗な文章、そして登場人物の心理の決め細かい描写。何よりもそれがこの小説を名作にしている。ディケンズの他の本も読んでみたい。  2017/03/17

びす男

78
上巻で広げられた伏線の数々が見事に回収されていて、目を見張るような気持ちにさせられた。文句なしに面白い。傑作だろう。予期せざる大逆転が下巻の中盤で起こり、そこからは読者をとらえて離さない展開が続く。イギリス庶民の喜怒哀楽、その美徳も悪徳も、すべてに命が宿っていて瑞々しい。新聞記者をやっていたディケンズ、誰よりも人間を深く洞察し愛した彼にしか書けない文学だと感じた。「大いなる遺産」を手にした主人公のまわりをぐるぐる走馬灯のように駆け巡る、親愛や誠実、追従、嫉妬、信頼などの諸相が美しい。あとで書評書きます。2015/03/16

NAO

61
結局、自分の領分を知りその中で懸命の努力をする人々、愚痴を言わず前向きに自分に与えられたことを行う人が、最終的には温かい家庭を手にいれ、幸せをつかむことになる。ジョーといい、ハーバートといい、ウェミックといい、彼らは決して自分のものでないものをどうしてもと欲しがったり、他人の身の上を嫉んで煩悶したりはしなかった。ピップに一番足りなかったのは、こういった自分の領分をわきまえてそこにどっしりと構えるて生きる覚悟だったのだろうか。かわいそうなのは、復讐心だけで生きていたミス・ハビシャムに育てられたエステラだ。2016/02/07

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