出版社内容情報
シェイクスピア[シエイクスヒア]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
325
タイトルロールのオセロは人格高潔、人望も厚く、ヴェネツィアの人たちみんなに愛されていた。そう、たった一人イアーゴーを除いては。劇中ではオセロは徹底して受身の存在である。劇を構成して行くのはあくまでも敵役のイアーゴーだ。望み得るすべてを手にしていたはずのオセロの胸中に巣くった「嫉妬」という魔物が時間を追って増幅してゆく。ただし、この劇では内面が行動によって描き出されるのではなく、あくまでも内的な苦悩としてそれが描かれているのである。オセロをムーア人と設定したことは、劇に限界を与えることになってしまった。2013/05/01
ハイク
142
シェックピア4大悲劇の一つ。私にとってはこれで最後で4冊目となる。4大悲劇の中で1番スケールは小さい。ヴェニス国の将軍オセローはトルコが攻めて来るのをサイプラス島で迎え撃つ準備をした。ところが急に海は荒れ狂いトルコの軍船は沈没し全滅した。オセローは戦わずして勝利を得た。そんな時オセローの妻は島に来た。ところがオセローからの贈答品の大事なハンカチを失くしてしまい、オセローは妻を疑った。これには裏で操る者が居たのだ。妻はオセローの副官であるキャッシオウと姦通したとされた。妻は無実であるとオセローに訴えた。2016/09/27
かみぶくろ
120
高潔なムーア人の武将オセローが、妻の不貞に疑心暗鬼になって真っ逆さまに転落していく。疑心を植え付け助長させるイアーゴーの悪党ぶりが見事。せりふに表れる機知と奸計で、終始この作劇をイアーゴーが支配している。結局のところ、この話は男女の惚れた腫れた的な醜聞がメインであり、他のシェイクスピア悲劇と比べて俗っぽさが漂っている。逆に言えば、シェイクスピアが悲劇として表現する程、文春的なものは古来から人間社会にどっしりと根を下ろしているということだろう。2017/10/21
優希
113
シェイクスピア4大悲劇のうちの1つです。ムーア人オセローとその妻デズデモーナの悲劇が描かれます。イアーゴーの悪役が激しく、全てが彼の思うがままになっていくのが巧みな策略だと思いました。デズデモーナの不義をでっちあげ、その虚偽を疑うこともないオセローの純真なまでの行動が凄いです。策略に踊らされるように猜疑心や嫉妬に狂うオセローの姿は悪夢そのものに見えました。オセローの行動はまさに鬼そのものでした。裏切りへの絶望だったからこそ、明らかにされた真実に安堵し、自殺したのだと思います。やりきれない愛の物語でした。2015/08/25
Miyoshi Hirotaka
98
17世紀のベニスは国際社会。法が支配し、肌の色や出自にかかわらず実力次第で重要ポストが与えられ、美女を娶るチャンスがあった。ところが、成功を妬む輩はいつの時代にもいる。その妖計により、人の心に潜む「法」が作用し、疑いが憎悪に増幅され、悲劇に拡大してしまう物語。シェークスピアの四大悲劇の一つ。黒人が高潔な軍人として描かれ、白人美女との駆け落ちが設定されているのはこの時代の文学では稀。この物語の主題は愛の悲劇。隙間がないようにみえる完璧な愛もちょっとしたことで崩れる。それは自己崩壊のようなもので止められない。2017/07/15