内容説明
つましく暮す一家の希望は、一旗あげて郷里に帰ってくるはずの父の弟、“ジュール叔父”だった。が、ある年の家族旅行中見かけた牡蛎むきの老人こそ…。裏切られてしまった唯一の希望を一種のユーモアをまじえて描いた『ジュール叔父』他、作者の郷里ノルマンディの漁夫と小市民、農夫たちの生活の中にあらわれる人間心理の内面を、作者特有の鋭い観察を通してえぐり出す傑作短編集。
著者等紹介
モーパッサン[モーパッサン] [de Maupassant,Guy]
1850‐1893。フランス生れ。母親の実兄の親友であるフローベールに師事し、創作の指導を受ける。1880年普仏戦争を扱った中編『脂肪の塊』で作家としての地位を確立、以後10年間で『女の一生』等の長編を6作と『テリエ館』「月光」「オルラ」等の中短編を300余次々に発表した。’92年自殺を図り、翌年パリの精神病院で生涯を閉じた
青柳瑞穂[アオヤギミズホ]
1899‐1971。山梨県生れ。慶応義塾大学仏文科卒。堀口大學に師事。詩作の一方、ルソー『孤独な散歩者の夢想』等の翻訳、『ささやかな日本発掘』(読売文学賞)等の評論の分野で幅広く活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マエダ
62
モーパッサンの短編には人間の思い込みや固定概念を逆手に取るケースが多い。2019/03/15
りく
62
本読みました。 『モーパッサン短編集Ⅰ』(著:モーパッサン、訳:青柳瑞穂) 感想はブログでどうぞ↓ http://zizamo2193.hatenablog.com/entry/2017/06/20/2056022017/06/20
おすし
28
フランス、19世紀田舎の林檎の花香る景色の中に、堆肥、家畜、人間の、におい。生きるための残酷な利己主義、野蛮なまでのけちくささ、冠婚葬祭の猥雑などんちゃん騒ぎ。対照的にやんごとなきご婦人の、夢見る夢子ちゃんな描かれ方に毒があって笑えたりもする。一方でサクッと絶望してパッと自殺するような潔いまでの残酷物語もあり、全体的に辛辣で毒々しい。生まれる(ヒヨコだけど)話『トワーヌ』に始まり、死ぬ話『老人』で締め、どちらもブラックユーモアなコントで笑った。林檎饅頭食べたい。2021/05/28
fseigojp
28
モーパッサン入門に最適 生まれ故郷のノルマンディの庶民の哀歓が活写2015/10/21
キムチ27
28
学生時代に乱読したモーパッサン。たちまち虜になった作家だが改めてその思惟に触れると、自分の来し方が投影され、ひどく渇いた哀しみを味わえる。当時はさらりと流した彼の人生・・精神病院で亡くなった、40年余の生きた時間、執筆は10年余りであり、何ら基礎学問はせず、ただ自分の生命から迸る感慨・情趣・熱情を泥の塊の如く原稿用紙にぶちまけたという事どもが分かった。なのに、なんという無駄がない文章、的確な観察力、立ちこめる臭気と生活感のある湯気。男どもは下半身がみなぎり、女たちは突き出た下っ腹をゆすって笑いさざめく。2014/01/16