新潮文庫
ゾルゲ 引裂かれたスパイ〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 428p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784102003121
  • NDC分類 391.6
  • Cコード C0198

内容説明

昭和十六年七月、世界情勢を揺るがす密電が、モスクワに向けて発せられた!「日本ハ独ソ戦ニ介入セズ。南進ス」―諜報網を駆使し、ついに御前会議の最高機密を掴んだゾルゲ。しかし一方、「本当の友だちがほしい」と吐露し、酒と女に溺れる日々を続けていた。胸中に渦巻く不安と癒されぬ孤独。未公開文書と愛人達の証言から、その横顔を浮彫にし、昭和史の光と影を描き出す傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ベイス

49
胸を打たれた。読み終わって体が震える、稀な読書体験となった。ゾルゲ、心がざわつく存在。ナチ党員の新聞記者を装いながら、開戦前の日本で巧みに諜報網を操りソ連に情報を流し続けたスパイ。この本において浮かび上がるのは彼の人間性。特筆すべきは関係した女性への緻密な取材。彼女たちの言葉から「人間ゾルゲ」が現れる。「尊敬」とは違う。でも妙に親近感を覚える。激動の時代において、およそ「スパイ」とはかけ離れた、真っ正直な人生を歩み切った。引き裂かれながらも泰然としていた。自分の中で1つの羅針盤となりうる存在と出会えた。2021/04/21

harass

25
ゾルゲが送った、ナチ・ドイツの侵攻作戦開始日は、ロシア側の無理解により握り潰される。対日用に極東に配備されている精鋭をモスクワ防衛に移送させるには、日本側の思惑をぜひ知る必要がある。ゾルゲは全力を尽くしてその情報を入手しロシアの危機を救うが、ゾルゲ自身が日本警察に検挙され……  スパイものの現実は地味なのだが、当時の奇妙な国際情勢を上手く解説してあり、人たらし女たらしのゾルゲのやり口や戦前日本の外国人の生活など、読んでいて飽きさせないようになっていて感心した。  一気に読め、おすすめする本。2014/08/19

井上裕紀男

21
理想の社会を実現、愚かな戦争を食い止めたい一心で突き進んだ名うてのスパイが身を滅ぼしていく様が痛々しい。酒と女への処し方は正に小説よりも奇なり。その辺りの描写が延々と続くのも致し方ないのか。 結局日米開戦を迎えてしまい、世の中が治安維持法に縛られる中であっけなく崩れるスパイ情報網と、不気味なくらい我関せずのスターリン体制が怖い。 同志の尾崎秀実が作った中国の情報網は未だに明かされていないことが多いようですが、優秀なスパイでも回り出した戦争に飲み込まれていくのだと本書で思い知らされます。2021/08/28

ゆずこまめ

8
一見華やかな毎日を送るゾルゲの孤独なこと。自分を偽り続けなければいけない彼の、友達が欲しいというセリフが切実です。破滅型のゾルゲの人生に加えて、当時の社会情勢や国際事情も勉強できて面白かった。2015/08/01

シャル

8
下巻ではいよいよドイツとソ連の戦争が始まり、それに対する日本の動きも相成ってゾルゲの精神も次第に追い詰められていく。戦争という事態に対し、スパイの苦難、困惑、そして逮捕後に見せる自分の情報が国を動かしたという自負が伝わるが、情報の重要さと共に、それら情報があってもそれぞれの国の思惑と事態は動かしきれないという現実もまた見える。スターリンが最初ゾルゲらの情報を信じず、後にそれを見過ごした失態を隠すように切り捨てたという逸話は、その象徴であるかのよう。ゾルゲを通し、戦争における情報とスパイの現実が見える一冊。2013/12/12

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