内容説明
同じ仏教でもインドとも中国とも異なる日本の仏教は、どのような変化を遂げて成立したのだろうか。本書では6世紀中葉に伝来して以来、聖徳太子、最澄、空海、明恵、親鸞、道元、日蓮など数々の俊英、名僧によって解釈・修正が加えられ、時々の政争や時代状況を乗り越えつつ変貌していった日本仏教の本質を精緻に検証。それは我々日本人の思想の核を探る知的興奮に満ちた旅でもある。
目次
第1章 聖徳太子と南部の教学
第2章 密教と円教
第3章 末法と浄土
第4章 鎌倉仏教の諸相
第5章 近世仏教の思想
第6章 神と仏
終章 日本仏教への一視角
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
十川×三(とがわばつぞう)
44
良書。勉強になった。▼「日本の仏教はブッダの教えから遠く離れて、独特のものになってしまった。その時代の人間が“そのようになること”を必要としたからこそ、その時代、日本の仏教は“そのようになった”」。日本仏教の思想の変遷を知る事ができると共に、その時代の日本人の考え方を知ることができた。▼神道、修験道についても学べる。2021/06/09
さきん
42
仏教は,日本に入ってくる時点で随分変容していた上,日本に伝わった後も日本人の好みに合わせて大きく変容していったことがよくわかった.オリジナルの仏教は,自分の中の問題を修行を通して理解し,悟りを開くことが極地としていった一方,日本では,すでに行基の布教のように他者の問題を解決することも修行の場としていたようだった.また,仏も外来神の一人として理解されていたようだし,空海や最澄が仏教の勉強をして帰ってきても密教の呪術のようなところが流行した.日本列島は異教の墓場,沼地であることを実感した.2016/11/15
no.ma
30
仏教思想史の良書です。こういうのでいいんだよと言いたくなる一冊。私が知りたいことが網羅されていました。特に「本覚思想」と「神と仏」の章は目から鱗がおちます。日本の仏教はインドの初期仏教とはまったくの別物ですが、なぜそうなったのか理解が深まりました。ただし、仏教を宗教として捉えた場合、真理が一つならば、無数にある宗派のうちいったいどれが正しいのか。あるいはすべて正しくないのか。当然のことですが、本書にもそれは書かれていません。2022/11/23
荒野の狼
30
著者は仏教の研究者の東大の教授で、本の体裁は、下2センチほどを脚注に宛てて、主要な用語、人物、著作などを短く解説(注が各ページにあるので、他書のように、巻末などにある注を読むために本をいちいちひっくり返す必要がない)。圧倒されるのは、巻末の15ページに及ぶ、“一部の”文献案内で、仏教の学習を進めたいという読者のためにテキストや全集の短い解説を加えた部分。2013/03/15
獺祭魚の食客@鯨鯢
29
世界宗教としての「純粋な」仏教は存在しません。インドはヒンズー教、中国は道教や儒教と混交してしまい国民は無宗教(共産国家だから当然?)皆土着の民族宗教と習合してしまい 、国民が信仰しているのは上座部仏教のタイだけかもしれません。 解脱とか出家など庶民が生きる縁(よすが)とするには重たすぎました。念仏と座禅、絶対帰依など、凡夫でも入り込める形の日本仏教ができました。アニミズム崇拝から始まる神道は私たちの腹にストンと落ちるものがありますが、仏教は抽象的過ぎます。(だからありがたい?)2018/06/22