内容説明
しーちゃんは町の大きな家の娘で、二十歳を過ぎているけれど静かに狂っていた。十四歳の私は、赤い椿のようにきれいなしーちゃんが大好きだった。でもしーちゃんは、好きだと言われれば誰にでも喜んで体を開く。だからある夜、私もしーちゃんの熱い脚の間で望みを果たした。しーちゃんは次の夏、狂ったまま死んでしまった―。胸の奥底に残る甘くせつなく恐ろしい恋の記憶の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
59
富山に関係する作家(若い頃、富山で過ごした。高校の先輩でもある)が書いた、富山の小高い丘陵の一角にある、実在する無名の坂の周辺に取材した(かのような)小説、しかも、小生の初恋の人が住む地区から遠くない場所(!)を舞台の小説、且つ、この作家が(市川睦月という名前で)作詞したものを、小生が好きな演歌歌手の香西かおりが歌っている、さらにさらに、小説の狂言回し的登場人物の名前が小生には悩ましいものである、などなど、小生に読めという誘引があまりに重なっているってことなのである。2008/09/11
Lumi
24
町の大きな椿屋敷にはしーちゃんという狂った娘がいた。二十歳を過ぎているしーちゃんは好きと言われれば誰にでも抱かれた。14歳の時「私」は仲間と共にしーちゃんを陵辱する。その翌年しーちゃんは狂ったまま死んでしまった。中年になった私は数十年ぶりにその町を訪れ昔に近づいていく。少年の私がした事は最低で残酷な行為であるのに「私」を通して昔を、しーちゃんを見るから綺麗で崇高な事のように読めてしまう。「私」が昔に近づくにつれ狂っていくように感じた。2022/05/14
野鹿
7
しーちゃんっていうネーミングが壊れた感を強くします。カバーイラストが、逸品。全体的に陰鬱。湿った淫靡さ。主人公の自己中心的な解釈もじとっと気味悪い。寛二を自分としーちゃんの子と疑いすらしないあたりも。 ラストは主人公の実は僕は寛二だったの?と混乱。気が狂ったの?2015/12/17
はるた
6
しーちゃんという、狂った女へ狂ったように執着した男(たち)の話。しーちゃんが悲惨で憐れすぎて、そして主人公の男の執着が気持ち悪すぎる。悲惨で憐れだからこそ、しーちゃんの美しさ純粋さが映えるのかもしれないけれど、気持ちが悪い。終章まで全11章ありますが、第1章だけで終わっていたら、美しく妖しい話として受け入れられたかもしれません。2020/08/14
gokuri
5
ずっと積読だった。そうかこんなに陰鬱な作風だったのか。2021/05/24