内容説明
サラリーマンの一人住いのおれの部屋。その狭い部屋の6畳の空間を黒黒と埋めて飛び回る蚊の大群。悪夢と妄想の世界に真情を仮託したスーパー・フィクション「蚊」。そして、爽やかな男のロマンを描く“おもしろかなしずむ”の極致「海をみにいく」など多彩な椎名誠の小説世界、全9編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
背番号10@せばてん。
24
1998年8月19日読了。あらすじは忘却の彼方。1998/08/19
牙生えかけのサイコ
18
今年もいっぱい刺されました。でも、本作の彼に比べたら…。寝起きの男を突然襲う、蚊、蚊&蚊。煙の如く部屋中ビッシリ蚊地獄。理不尽極まりないサイコ展開なのに何だかゆる〜く読めてしまうのが椎名節。むしろこの語り口だからこそ狂気がよりバクハツ的に感じられるのかしら。独特の呟きスタイル?が落語を聴いているみたいにぬるぬる流れていくのに、たまーに鼓膜破られるよなクセ表現がクセになります。『顎這い寝戻り工法』て何よ。うどんも急行もゆる狂ってて最高ですが、海や波にしんみり、読書公社がまた愉快でどの話も好きですねびいびい。2021/09/30
ヒロユキ
13
衣替えを兼ねた捨て祭り(断捨離ともいう)をしたところクローゼットの奥から出てきたため再読 「蚊」…これはやっぱり夏の暑い日の夜に読むべき話ですね。ああ カユい! カユい!カユい!印象的なのは「日本読書公社」…政府が許可したものしか出版されない世界、出版の可否を判定するため毎日仕事として本を読む主人公、仕事として本を読むのに憧れる反面、好きでもない本を読まなければいけないのもやっぱり大変なんだな…と。2012/05/04
makoto018
11
目黒考二の訃報に接して本棚から探してきた「日本読書公社」を読む。「本を読んでお金をもら得る株式会社で働きたい」という、目黒考二の話から着想と思い出したから。公社の小役人ぶりがツボ。昼休みに趣味の読書とか、業務後の非合法活動も本のこととか、今読んでも風化していない。表題作「蚊」もヒッチコック映画のようで体感的に恐ろしい。実体験が元になった半私小説である「海」「波」もまた味わい深い。 https://www.shiina-tabi-bungakukan.com/bungakukan/archives/48962023/02/26
rikuson
10
独特の擬音語・擬声語が面白く、それに負けないくらい各短編も個性的であった。あとがきにはエッセイよりも小説の方が自分の気持ちが素直に出ると書いてあったが、その言葉も含めての本作なんだろうなと、とにかく奇抜であった。2017/11/09