内容説明
無辜の民をも殱滅する残虐無比の項羽と、陰謀と変節の梟雄劉邦。中国の人口を半減させたといわれる楚漢戦争が勃発した。緒戦こそ劉邦は項羽に敗れたものの、劉邦の壮大な包囲網に項羽は追いつめられていく。人民にその高潔英邁を尊崇された不撓の人、田横の正義さえも、漢軍の奔流に呑まれていく。著者をして「理想像」と言わしめた不屈の英雄を描く傑作、明鏡止水の第四巻、完結編。
感想・レビュー
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KAZOO
61
宮城谷さんは、従来の項羽や劉邦よりもこの田横という人物を評価しているようです。とくに劉邦は漢の高祖ということで様々な小説などではよく描かれることが多いのですが権謀術数の人物であったのでしょうね。それでないと漢のような国を作り上げることはできないのでしょう。徳川家康と相通じるものがあります。私ははじめて田兄弟のことをこの作品で知りました。このような人物を取り上げてくれたことに目を開かされた思いがします。日本では山本周五郎などがいますが、宮城谷さんも中国の人物をよく研究されています。これからも期待したいですね2015/05/04
著者の生き様を学ぶ庵さん
37
楚漢戦争は劉季の勝利にて畢んぬ。項羽は弑す而已、劉季は騙す而已。田横はその劉季及び韓信、酈食其の幻惑に騙され、斉王・田広、華無傷、田解、許章、田光を失ふ。劉邦が命「漢に抗せし罪を赦す故、都に上るべし」に抗ひ、自刎したるは、野盗上がりの劉季に対し、王族が矜持を見せつけたるが如し。徳を積みたる王が詐謀を続けし野盗に屈するは、理屈通りに行かざる中国史たる所以なるが、斉国に太公望、桓公、管仲・鮑叔師弟、晏弱・晏嬰父子、孟嘗君・田文、田横と輝ける星の天に満つるはあらまほしきことかな。2016/02/04
はま
29
再読。シリーズ完結。「項羽は殺すだけの人、劉季(劉邦)は騙すだけの人」切ないわ〜。言うてもこの時代、項羽が四面楚歌食らって、劉邦が天子になるのは分かってる。どんどん戦友を失っていく田横がもう切なくて切なくて( ;´Д`)この本は劉邦をこき下ろす為の本。読めばまず間違いなく劉邦が嫌いになれます(笑)2013/07/17
サチオ
18
欺瞞と裏切りに満ちた劉邦に最後まで屈せず己を貫いた田横。その最期は鮮烈でした。後世まで語り継がれる彼は真に王にふさわしい。素晴らしい人にこの本で出会えて本当に良かった。さて、宮城谷先生は現在、梟雄・劉邦を主人公とした作品を執筆中との事。両極端な英雄が視点を変えてどの様に描かれるのか、文庫化を待つつもりであったが、単行本を手に取りたくなってきた!2015/06/13
Smileえっちゃん
15
1巻~4巻まであっという間に読み終えた。中国4千年の歴史の中にこんな時代があったのですね。介子推から宮城谷文学ハマり、いつも主人公に恋し引きこまれてしまってる。田横の名も知らなかった! 最後まで自分の意思を貫き通し、身を持って訴えた・・・これでよかったと思える。さわやかさが残った。きっとまた再読すると思う。2012/09/14