内容説明
崔杼は慶封と手を組み君主を弑した。一旦は崔杼の専制が成ったかにみえたが、崔氏は分裂崩壊し、代わった慶氏も誅せられた。脆弱不安の政情下、晏嬰は天の意志、民の声を全うしうるのか。後代、司馬遷がその御者になりたいとまで敬慕した晏嬰。稀代の聖人の人生の哲理を捉えた巨編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
119
全四巻読了。今から2500年も前の話だが、これだけの時を経ても人の本性って変わらないものだなあと改めて感じた。それは、『人というものは、つくづくわからない。』ものであり、自分の幅を超えた欲を求めてしまうものだからかもしれない。徳と人望を備えた賢人“晏氏”。己の幅を知り、そして『やりつづける者は成功し、歩きつづける者は目的地に到着する』という、言わばあたりまえのことを知って、かつ実践できる人がどれ程いることだろう。国家においては、私欲ではなく、国民の欲を天意とし統べてほしいものだ。いい読書ができた。2020/06/13
NAO
55
不思議なことに、晏嬰は、相手が君主であろうと、決しておもねることなく自分の言いたいことを言い通している。それなのに、彼は一度も罰せられたことがない。晏嬰の自分は正しいことをしているという思いが彼自身のオーラとなって、たじろがせるばかりに相手を打つのだろう。 とはいえ、絶対的権力を持つ君主ならば、どんな名臣であろうとも、気に入らなければ簡単に殺してしまうこともできる。やはり晏嬰は、真に天から愛され、天に守られた人だったのだろう。2022/09/15
KAZOO
51
宮城谷さんは様々な中国の文献を読んでこのような物語を紡ぎあげて行っているのですね。あまり起伏がないような物語でもこのような文庫4巻にまで物語をよく書き上げてくれたと感じます。私は結構中に書かれている言葉を書き抜くというかノートに書いているのですが、いい言葉がいくつかありました。景公とのやり取りなどはいいですね。2015/03/13
とも
38
国と国とが中華の覇権を争い盟約し、裏切り、そして争い合う章も、一国の中において己の栄を極めようと互いに腹を探り合い、策略策謀が練られる章も読んでて楽しかったけど、晏嬰の人格、考え、生き様が書かれた最終章が一番ズシンと響いた。人生の教訓となるべき晏嬰の言葉の一つ一つに感銘。 暗君と評される景公を宰相の立場で補佐し諌め長きに渡る長期政権を樹立させた晏嬰の手腕も素晴らしい。 「孟嘗君」の時もそうだったけど、冊数が全く気にならず一気に読める良い読書タイムを満喫できました。 2020/01/06
姉勤
29
興っては滅ぶ。次々と権力の主が入れ替わる中、斉の宰相となる晏嬰。権謀を操ることも、君主に阿ることも、利で釣ることも、武力にものを言わせることもなく、ただそれは度を超えた誠実さをもって。時の権力にではなく、社稷という形のないものに仕え、相手が大国の君主だとしても憚らず直言した。その勇気は、戦場で発揮するそれよりも大きいかもしれない。晏嬰の見事すぎるその人生よりも、彼をやっかんだ君主の側近、梁丘拠(りょうきゅうきょ)にシンパシーを感じる。非の打ち所がない人物と比べられるのは辛いよね。2016/05/25