新潮文庫<br> 台風の眼

新潮文庫
台風の眼

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  • サイズ 文庫判/ページ数 296p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101432212
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

悪性腫瘍の手術から半年。免疫強化剤による宙を漂うような状態の中で、作家は小説を書いている。最後の作品になるかも知れぬ小説を、自分の頭蓋骨の内側に坐りこむのにも似た書斎で。私はあのとき確かに生きていたのだ、と感じられる場景に出会うために。想起することで高められ、強められる現実感を呼びよせようとして。死にも対峙し得る記憶の鮮烈、濃密な瞬間を…。野間文芸賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メタボン

22
☆☆☆★ 静かで知的な文体。ソウル、東京、サイゴンをめぐる過去の情景がフラッシュバックのように浮かんでくる。前半は冗長のように感じたが、中盤以降、この世界観になじんでくると、「人生の振り返り」という観点でしみじみと思う事があった。2017/09/03

ステビア

15
渾身の一作。今まで読んだ著者の他の作品とは気合の入り方が違うと思った。日野流幻想小説としても変わり種の私小説としても一級品。2014/05/31

Bartleby

14
連翹の黄色、スカートの布地の紺、飛び散る血の赤、工場の鉄の色、焼けた灰の色、縄の白い切断面、ベースギターを照らす夕日、丸さを感じさせる空の色、初めて見た死者の肌色…。色彩が、そしてそれを生み出す光が、作品全体に溢れている。その光に自分の心まで照らされるような思いがする。忘れていた感覚、出来事を思い出す。色あせた記憶としてではなく、新鮮な色味を帯びたものとして。2014/11/12

k.m.joe

8
山河の遠景から、植物、虫、水滴まで、自然の事どもが、存在感、匂い、触感、色彩などを通じ細かく描写されている。そのせいか人物像が薄い。これは良い意味で非日常的な存在として惹きつけられる。時代背景も、占領下の韓国から敗戦後の田舎への疎開。旧制高校から大学へと変わりゆく「東大」時代。新聞記者としての戦時下のソウルやベトナム駐在。いわば舞台も非日常的。現実と異界のハザマをふらふらさせてくれる小説らしい小説。2012/09/16

あかほ

2
あまりにも個人的な記憶の記録でありながら、その緻密さ、明晰さ、濃密な意思と知性の充溢にめまいがするほど。圧巻。2013/03/07

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