内容説明
どこの家庭でもありそうな、でも他人には言えない妻の悩み―夫との冷え切った関係、姑との対立、病死した一人息子への想い、受験生を抱えるつらさ、あるいは生活費の工面や、男友達との密会だったり…。それぞれに事情を抱えた妻たちは、何かを変えたくて旅に出た。新鮮な風景と語らいが、少しずつ彼女の強張った心を解きほぐす。切ないけど温かい、家族を見つめた物語集。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960(昭和35)年、東京生れ。早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て、作家活動に入る。’88年『幸福な朝食』が日本推理サスペンス大賞優秀作になる。’96(平成8)年『凍える牙』で直木賞受賞
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感想・レビュー
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りゅう☆
105
姑との確執。夫は子供を本心では産んでほしいと思ってない。夫の浮気相手が妊娠?!浮気相手と旅行に来たけれど。やっと自分の人生を謳歌してる母。浮気相手の陶芸家の放った言葉に自分の傲慢さに気付き。姉妹だからこそ話さずとも分かって。元カレとのEメールがいい感じだったのにまさか…。追い詰められた息子と夫とこれから家族で暮らせるかな。残してしまった娘と一緒に歩いた坂道。/心に何かを抱える女たち。日常と離れて訪れた地で今まで抱えてた心の闇と向かい合うことができ、やっと一歩踏み越えた。全力でエール送りたい。亡くなった→2021/04/30
ゆめ
56
12の短編集。それぞれの女性が 何らかの事情でひとり旅に出る。何かを求め 旅する中でほんの少しだけ心がとけて ほどけて たぶん行く前よりは癒されていく。解決までにはいかないまでも 光がさしたことは確かだろう。2017/07/13
しーちゃん
54
12の短編に登場するのは、いずれも名前のない「彼女 。」夫や姑の狭間で息切れがしそうな女達。日常の、何処にでもありそうな家族との行き違い、鬱屈した感情は女性なら誰でも共感する。子供を亡くした女の喪失感、幼児を置いて逃げた女の絶望感は短編にするのが勿体無いほど胸に迫るものがあった。日々の生活に不満はあれど、いずれの女性も、そんな生活が幸せの証なのだと気づく。この物語の舞台になった12箇所の土地は、行ったことがないが、きっと再生するのに相応しいところなのだろうな。2017/06/12
アーモンド
36
よかった。それぞれの問題を抱える妻12人の旅模様。日常から離れ旅先で出会う人々や、視点が変わる事で、その先の道が見えてくる感じかとてもいい。乃南さんぽくないようでいて、読み応えたっぷりという満足感は、やはり乃南作品だ。舞台となっている旅先にも行ってみたくなる。どれも良かったけれど、1番は「青年のお礼」。最終ページで落涙…。2017/05/03
miww
33
初読み作家さん。それぞれに悩みを抱えた普通の主婦が一人で旅をする。旅先での出来事、出会った人によって自分の方向性みたいなものに気がつく。悩みが解決する訳ではないがどのお話も希望が見える終わり方にホッとする。短編だが12編ともうるうるしてしまった。いくつになっても自分の意思を持って変われる人間でいたいと強く思った。「微笑む女」「青年のお礼」「姉と妹」「Eメール」が特にマルかな。2014/11/05