内容説明
わたしは誰―?6月12日の交通事故で記憶を失った千尋。思い出したのは、一週間後の19日が自分の結婚式ということだけだ。相手は一体、誰なのか。“自分探し”を始めた千尋の前に、次々と明かされる予想外の事実。過去のジグソー・パズルは埋められるのか…。「結婚」に揺れる女性心理を繊細に描き、異色の結末まで一気に読ませる、直木賞作家のロマンティック・サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
116
記憶喪失になった千尋は名前と結婚式直前という記憶だけを頼りに、決して誇れない過去を取り戻していく。彼女のややヒステリックな内面の機微を描くことに重点が置かれている。会話一つで事実をあやふやにしたり、記憶喪失を繰り返すという着想はいいのだが、継母らのあからさまな強欲と油断ぶりに加えて、憎めない女中を使った盗聴や芝居など、後半はコミカルなやりとりの多用と駆け足な展開が話の緊張感を削いでいる。脱出劇も真相もサスペンス的なスパイスは感じられないが、ラストシーンは読み方次第で不穏なものにもなりそうな著者らしい演出。2021/03/31
NAO
62
6月12日、雨でスリップした車から投げ出され記憶を無くした千尋。自分の名前以外は何も覚えていなかったが、19日に結婚するはずだったことを思い出し、自分について調べ始める。同じような場面が繰り返され、だがその先に現れるのはまったく違うシチュエーションという、何とも複雑で、奇妙な物語。ようやくすべてが分かったと安堵したあとの、ラスト。彼女に平穏な暮らしは訪れるのだろうか。2022/08/27
ミーコ
53
タイトルに惹かれて読んでみました。流石 乃南さん 千尋は好きになれないけど グイグイ引き込まれる!先が気になる❕ と後半 一気読み・・・なんですが最後が エッ? ループする❔ なんで?とモヤモヤした気分になりました。でも乃南さんの作品は好きです。2016/01/22
ゆめ
47
なかなか複雑なミステリー。 少し疲れたけど 楽しめました。 記憶喪失怖いです。2017/08/26
きいたん
43
自分が何者かわからない不安感はいかばかりか。自分を自分たらしめるものはそれまで生きてきた長い年月の記憶。それが全て消えうせてしまったら自分を維持できない。好みも、話し方も、考え方も…人格そのものがわからなくなる。本書は記憶喪失となった千尋が、自分の過去を探り、自分を取り戻していく物語だ。しかもその記憶喪失は何重にも重なり、更に謎の男・一行の存在が気になり先を急がせる。30年前が舞台なので古さはあるが気にならない。千尋の考え方等が好きになれず、共感せずに読んだ事で物語を客観的に見てむしろ楽しめたように思う。2022/09/22