内容説明
ある時はモスクワ大学の泉水に飛びこんでフナを追い、またある時はオーストラリアの珊瑚礁でサメに追いかけられる。ヨーロッパ、アフリカから南の島まで、カヌーイスト野田知佑が釣りざお片手に世界を漫遊。旅の先々で出会った奇妙な人々と愉快な出来事、美しい自然、うまい酒、食物そして魚―半径1メートルの手探り感覚で綴った、おもしろうてやがておかしい旅の大雑記帳。
目次
第1章 魚の顔に描いてあったこと
第2章 魚の数ほど人間がいた
第3章 魚も驚いた世間ばなし
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
51
【再読】2022年最初の読了。カヌーのイメージしかない著者だが、20代には世界中を巡るバックパッカーだった。しかし、名所旧跡には見向きもせず、水辺、水中での魚獲りが中心というのが著者らしい。本書前半は野田節全開の旅エッセイだったが、後半は職業的な旅レポの枠に嵌め込まれた感じの文体になった。あとがきは著者がまだ千葉県亀山湖に在住の昭和60年。奥付は昭和63年初版、平成5年14刷。2022/01/03
booklight
22
カヌーイストの先駆者として有名な野田知佑の初期海外見聞録。ゴムボートと釣り竿をもってソビエト!からタヒチまで世界の水辺をふらふらと出歩いている。楽しめる水辺に自由に行く、という部分は変わらず、旅先であった人間とのユーモアあふれる交遊も大きな魅力。のちの自伝的な作品を読むと、この頃、自分は何者なのか、という悩みを抱えていたようだが、やっていることは魚とりだったりするのがいい。結局それをやり切ったことになるのかと思うと感慨深い。もちろんユーコンものや『日本の川を旅する』などもよいがこれはこれで雑誌的に面白い。2018/08/29
Ken05
8
野田氏がまだ若い頃に書かれたもので、ライターとしての色気がいい意味で濃い。サービスたっぷりに語られるエピソードの洒脱さ、それでいてクールに人間を見つめている鋭い視線。さまざまな国の人や文化について語る姿は、知識と経験の真の文武両道だ。きっといろいろなものを飲み下しながら、良いところも悪いところも含めて、人が好きなんだなあと感じられる。再読。2009/07/03
圭
6
著者曰く「そもそも海外旅行記なるものは/読む方も眉に唾をつけながら読むべき性質のもので/そのまま信じてはいけない。人は全く同じ体験をしても、自分の好み、教養、心情に合わせてそこから選びとるものが違うからである」。全くその通りで、その国の人達全員がそうじゃないとわかっていても、英国人気質や「イタリア人は如何にしてつり銭をごまかすかに心血をそそぐが、ドイツ人は如何にしてつり銭を返すかに全精力をつぎ込む」等、そういう感じなんかわかるなぁとつい笑ってしまう、世界の釣り話と著者が見た各国のお国柄が楽しめるエッセイ。2013/12/09
ドナルド@灯れ松明の火
6
【後日追記】相変わらず、文章がうまい。若い頃のシベリア鉄道を使って欧州のヒッチハイクぶりがなかなか良い。自然体なのが一番。 沢木耕太郎の深夜特急とは又違う味であった。2008/06/08