内容説明
蓋を開けたら最後、この近江屋に災いが降りかかる…。決して中を見てはいけないというその黒い文箱には、喪の花・木蓮の細工が施してあった―。物言わぬ箱が、しだいに人々の心をざわめかせ、呑み込んでいく表題作。なさぬ仲の親と子が互いに秘密を抱えながらも、寄り添い、いたわり合う「お墓の下まで」。名もなき人たちの日常にひそむ一瞬の闇。人生の苦さが沁みる時代小説八篇。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960(昭和35)年、東京生れ。’87年「我らが隣人の犯罪」でオール読物推理小説新人賞を受賞。’89(平成元)年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。’92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。’93年『火車』で山本周五郎賞を受賞。’97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を受賞。’99年には『理由』で直木賞を受賞した
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
230
宮部みゆきさんの時代物の短編集。市井の人々の悲哀を描いた短編が8編。読んでいて感じた事は、宮部みゆきさんの描く人情の機微の巧みさ、そして悲哀のある話しが多いことです。江戸時代に多かった、火災や水害で天涯孤独になってしまった孤児達が奉公先で懸命に働く姿に、藤沢周平さんの作品と近しいものを感じた。また、長屋物の話しは後の「ぼんくら」シリーズに繋がるものと感じた。人情の機微を味わいながら、短編集なので一気に読める。宮部みゆきさんの作品は長編も良いが、短編にも充分な魅力がある。これからも追い続ける作家さんです。2016/11/05
ehirano1
208
標題作について。スピーディーで迫力あったなぁ。謎は残りますが謎は謎のままであるのでは、堪忍箱の中身はあくまで「手段」であって、「目的」は禁じられたモノに対する人間心理、というところではないでしょうか。その意味で、単なる『秘密』ではなく堪忍箱に対してヒロインの両親が「堪忍、堪忍」と言わせたことで、秘密以上のモノに仕立て上げた手腕に感服です。2023/05/06
夢追人009
203
人間の心の闇、仏の顔と鬼の顔、晴れの日ばかりでない人生の悲しみを描く宮部みゆきさんの秀作時代小説集。昔の人も現代人と人間性に変わりはなくそれぞれに心に秘密を抱えて悩み苦しんでいたのですね。悩みを一人で抱え込んで思い詰めずに誰かに相談したり上手に発散したりして深刻にならない事が大事だなとつくづく思いますよね。「堪忍箱」と「十六夜髑髏」は過去の怨念が後世に祟りを為すホラーで救いのない結末なのを初めとして哀しい物語が多いですが何とか人生の道標にして顔を上げ、前を向いて進んで行きたいですね。上を向いて歩こうです。2019/01/22
いつでも母さん
198
タイトル作を含む時代小説短編8作品。毎日一つずつ読んだ。やっぱり宮部さんが好きだ。どれも読後の余韻が何とも言えず好いのだ。2020/09/24
KAZOO
196
これも宮部さんの時代小説の短篇が8編収められています。結構そんなにすっきりした読後感ではないのですが余韻というものはあります。江戸時代の人情ものと若干ミステリーがかったという感じです。表題作は最初にあり印象に残りますが私は最後の「砂村新田」が印象に残りました。2016/02/17