内容説明
近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった娘のお美津だという噂が流れたが…。幼い頃お美津に受けた恩義を忘れず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る「片葉の芦」。お嬢さんの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会った怪異の顛末「送り提灯」など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く7編。宮部ワールド時代小説篇。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960(昭和35)年、東京生れ。’87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。’89(平成元)年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。’92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。’93年『火車』で山本周五郎賞を受賞。’97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を受賞。’99年には『理由』で直木賞を受賞。’01年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、’02年には司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
322
宮部みゆきさんの時代物の短編集。岡っ引きである回向院の茂七親分の下に、七つの事件が持ち込まれる。宮部みゆきさんの時代物の短編集で屈指の傑作だと思う。七つの短編どれも完成度が高い。市井の人々の哀切や歓び、そしてぞっとするような悪意が丹念に描かれています。親子の絆、夫婦の間柄、幼い日の憧憬と現実。特に「落葉なしの椎」での、お袖と勢吉の親子の関係の雪解けには泣かされました。また「消えずの行灯」の市毛屋夫婦の間にある恐ろしさには、久々に背中がぞくりとした。まだまだ宮部みゆきさんの未読本があり、読むのが楽しみです。2017/01/15
kaizen@名古屋de朝活読書会
283
七不思議。今でいえば、都市伝説。 題材もよいし、登場人物もよい。 回向院の茂七。脇役として出てくる。 大川を渡った深川は江戸ではないのかもしれない。 時代物が苦手な人でも楽しめる。2013/05/19
HIRO1970
250
⭐️⭐️⭐️宮部さん大当たりです。今回確信に至りました。本書は時代物の短編集ですが、1991年の著作なので20数年前のものとなりますが、僅か30歳でこの精度の高い作品を書き上げるとは驚きです。回向院の茂七なんてのが出てきてテーマが深川の七不思議とは恐れ入りました。完全に我が心の師匠池波正太郎先生(普段は馴れ馴れしく正ちゃんと呼んでいます。)の若き日の作品そのものが復活したかのようです。これで食べ物の描写が精緻で大胆になればクラクラものの作品になること間違いありません。みゆきちゃんと呼ぶ日も近い将来かも?2015/02/07
夢追人009
239
宮部みゆきさんの最初の時代小説短編集を読み終えた今私は読まず嫌いの自分を深く反省しています。うーん、貧富の差が激しく今よりも確実に不便で悪人は変わらず存在するのだろうけれど世の中の仕組みが今ほど複雑でなく解り易くて人間性に大きな違いもなく却って真っ直ぐで人情が細やかな部分もある江戸時代が羨ましくもなりましたね。男も女も老いも若きもみんな苦労を知っているから打たれ強くしぶとく逞しく生きているバイタリティーの面では現代人は間違いなく敵わないでしょうね。岡っ引きの回向院の茂七親分は現代のベテラン名刑事でしょう。2018/11/17
KAZOO
205
宮部さんの最初の時代小説です。何度目かですがいつ読み直してもうまいと思います。短編小説が本所七不思議にかこつけて七つ収められています。時代劇というのは世の中がが変わってもあまり影響なく古臭くなったりしないので非常に何度でも読めます。結構若い時に書かれている割には人の人情というものをうまく描いていると思われます。池上冬樹さんの解説はこれだけで当時の宮部みゆき論になっている力の入ったものです。2016/02/02