内容説明
お父さんが初めてビートルズを聴いたのは、今のおまえと同じ歳―十四歳、中学二年生の時だった。いつも爪を噛み、顔はにきびだらけで、わかったふりをするおとなが許せなかった。どうしてそれを忘れていたのだろう。お父さんがやるべきこと、やってはならないことの答えは、こんなに身近にあったのに…心を閉ざした息子に語りかける表題作ほか、「家族」と「父親」を問う全六篇。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963(昭和38)年岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。’91(平成3)年『ビフォア・ラン』でデビュー。’99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で直木賞を受賞する。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々と発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
467
かつて「サンデー毎日」に連載された、6篇からなる短篇集。いずれも「問題が何も解決されていない」点に共通項を持つ。著者自身の「あとがき」によれば、それこそが「生きることのリアル」なのだそうだ。たしかに、いずれの作品でも問題を抱え、その渦中にいる主人公たちは葛藤に身をさらされる。最初の3篇には解決は見えないが、それでも後半の3篇は解決に向けて一歩を踏み出している。6篇のいずれをとるかは、これまた好みが分かれそうだが、表題作はあまりにみじめに過ぎるし、私は「フイッチのイッチ」をとりたい。2020/03/11
テンちゃん
273
14歳(⊙.⊙)父親(`ロ´)我が子!⇨6つの話( ̄へ ̄)父と子!⇨『意見なんていらない!ただ聞いて欲しい瞬間がある』o(>_<)o『答えはでている!』『未来が見えなくて不安で、前に進む勇気が欲しかったあの頃!』o(>_<)o『頭ごなしに指示ばかりされて人生のレールをひきたがる大人たちへの苛立ち!』『ただ寄り添って欲しい!』(`ロ´)『今の自分の立場と存在を向き合って認めてほしいだけ!』⇨大人への成長『あなたを愛している!』『貴方を信じている!』子供の心を抱きしめて欲しい!傑作作品。☆(﹡ˆ﹀ˆ﹡)4.72015/11/29
サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥
111
家族をテーマにした短編集。ここで語られているのは決して幸せな家族ではない。遠く離れ一人暮らしをする母親とギクシャクした息子。離婚した母子家庭。心を閉ざし引きこもる息子を持つ父親。入った高校が面白くないと中退しようとする娘。店をたたみ家族と別居している男。安易な ハッピーエンドでも、お涙ちょうだいの「感動物語」でも、劇的なラストがあるわけでもない。そこには目の前の現実を必死に生きる等身大の家族の姿がある。派手さはないがじんわりと心に沁みる作品。重松さんはこういうのが上手いと思う。★★★★2018/05/15
mura_海竜
99
全6編の短編集。図書館リサイクル本。重松さん初読み。このような作家さんとは知らなかった。非常に現実的。実際、傍らで起こっている普通の出来事。『団旗はためくもとに』『青あざのトナカイ』はよかった。押して忍ぶ『押忍!』。つまり後悔するけど言い訳しない態度。『団旗・・・』のお父さんは、『3匹のおっさん』の重雄とラップした。応援することの意味、・・・なるほど、競技者は孤独。「おまえが落とした物は、一緒に拾うちゃるけえ」子供に対する親の覚悟。に対し、子供から逃げる親。長編小説があるならば読んでみたい。2014/03/12
HIRO1970
90
⭐︎⭐︎⭐︎リハビリ11冊目は山形出張時に読みました。重松さんも既読は丁度11冊目でした。(ダブルでゾロ目)本短編集6作品はどれもミレニアムの頃の作品ですが、流石は重松さんで安定のハズレ無しでした。中でも個人的なおススメとしては表題作と応援団物の2作品がワンツーだと思われました。2019/06/26