出版社内容情報
江國 香織[エクニ カオリ]
著・文・その他
内容説明
「すみれの花の砂糖づけをたべると/私はたちまち少女にもどる/だれのものでもなかったあたし」。恋人と心のまま体を重ねもするし結婚をしているしどこへでも旅することができる。大人の自由、大人のよろこび。だけど少女のころ、一人決然と向きあった、ままならなさ、かなしみは、変わらず健全ではないか!―言葉によって勇ましく軽やかな、著者の初の詩集。単行本版に12編を増補。
目次
すみれの花の砂糖づけ(だれのものでもなかったあたし;ちび;おっぱい;じしん;うちのバスタブ ほか)
言葉はいつもあたしをいさましくする(おやつの時間;言葉はいつもあたしをいさましくする;こんなに晴れた真昼ですから;時間;子供部屋みたいな寝室で ほか)
著者等紹介
江国香織[エクニカオリ]
1964(昭和39)年東京生れ。短大国文科卒業後、アメリカに一年留学。’87年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、’89(平成元)年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、’92年『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞、『きらきらひかる』で紫式部文学賞、’98年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞を受賞
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感想・レビュー
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優希
104
どうしてこうも魅力的なんでしょう。やわらかい言葉と瑞々しい表現。どの詩も素敵でスッと入ってきます。澄んだ水のようにさらりとしていて冷たくてどこか哀しみを感じるけれど、満ち足りた感じがします。ちょっと心細くなるような距離感があって、そこが心地よいんですよね。色々な感情が詰まっていて心に響きました。好きだなぁ、この感じ。2015/12/03
青蓮
103
詩集が読みたくて買い求めました。江國香織さんの詩はシャボン玉のように淡く儚くて、柔らかい。でもその中に大人であることの切なさ、悲しみがあり、パチンとシャボン玉が割れてしまえば涙が零れてしまう。詩の一つ一つに物語があり、言葉の端から温度や湿度、匂いまで感じ取れるよう。江國香織さんの詩は教えてくれる。年齢を重ねてもずっと心の中に「少女」がいることを。危ういけれど、まっさらで自由だった頃の「私」。まだ愛も知らなかった「私」。時には「少女」に戻ろう。無邪気に笑うために。すみれの花の砂糖づけを食べながら。2019/04/07
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
88
〈すみれの花の砂糖づけをたべると 私はたちまち少女にもどる だれのものでもなかったわたし〉。江國香織さん初の詩集。純度の高い71篇の言葉の花束で編まれたタペストリーみたいです。純度が高いというのは〈純粋・無垢〉の意味ではもちろんなく、黒かったり、バカっぽかったり、愛らしかったりと多彩な表情をみせてくれます。『ばかげてあかるい日ざしのなかで』『トム』『きたえられた肉体』『父に』『ゆうべ妹と』『ぐわりとさびしくなるのでしょう』が好き。物語のような作品が多い印象です。最愛の人とガーゴイルになるのも悪くないかも。2015/03/07
nico🐬波待ち中
81
表題がピタリと当てはまるくらいに、甘くて濃厚な香りが匂い立つような詩集。江國さんの恋愛対象の男性に対する気持ちがストレートに伝わってきて、正直戸惑った。こんなにも男性にベッタリなんて…。私が相手の男性なら、江國さんの真っ直ぐさにちょっと引いて逃げ出したくなるな。江國さんは疲れないのだろうか、と要らぬ心配をしたりして。夕暮れのキスは素敵だけれど、カニを食べながらのキスは嫌だなー。『なにもない場所に』『無題』『言葉はいつもあたしをいさましくする』が好き。2022/05/13
まる
65
著者初の詩集。タイトルは「だれのものでもなかったあたし」の冒頭部。リアルでありフィクションでもある。不倫の詩などはおそらくフィクションだろうが おそろしくリアルである。ひとつひとつの表現が さすが江國香織と言わざるを得ない。ゆっくりゆっくり味わいながら読んだ。2016/01/21