内容説明
南北の対立を抱えるロタ王国。対立する氏族をまとめ改革を進めるために、怖ろしい“力”を秘めたアスラには大きな利用価値があった。異界から流れくる“畏ろしき神”とタルの民の秘密とは?そして王家と“猟犬”たちとの古き盟約とは?自分の“力”を怖れながらも残酷な神へと近づいていくアスラの心と身体を、ついに“猟犬”の罠にはまったバルサは救えるのか?大きな主題に挑むシリーズ第5作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
429
憎しみと怒りの先に何がある?この巻では日頃、女を捨てたかのような用心棒バルサの母性と弱さがよく出ていた。獣のように殺戮を繰り返すなら彼女に魅力はない。人間らしく悩むから読者はバルサに共感し、感動する。アスラが呼ぶ【カミサマ】は我々の世界で言う核兵器のこと?そんなことを考えつつ読んだ。大人の事情で建国の儀は修羅場になる?兄妹の母トリーシアの正体が明らかに。神の存在にも踏み込んだ秀作。それでも差別は残る。人は何と汚いのか。解説は書評家としても知られる児玉清(11年没 後述)。次は「蒼路の旅人」でチャグム出撃。2020/02/12
抹茶モナカ
375
殺戮の神の力を手にした少女アスラを巡って、幾重もの罠が仕掛けられ、バルサは命の危険に晒される。上巻で張られていたイーハンの話という伏線も回収され、大きな物語となった。アスラは目覚める日が来るのかな。ラストは静かな切なさと、希望を感じさせる。2015/07/13
kariya
329
行使できる力の大きさに、我を忘れていくアスラ。国を揺るがす陰謀へアスラを利用する勢力を知った、バルサの選択は。母の処刑を面白がって見物する人々への怒りが、力の引き金となった経緯がとても痛い。けれど憎悪の末を知り、自らの暴力を受け入れても肯定はしないバルサだからこそ、「狼を殺したときの、あんたの顔は、とてもおそろしかったよ」という少ない言葉で、伝えようとした意味は重い。予定調和でない結末の、バルサの選択と言葉には思わず本気で泣いた。サラユの色の衣をまた、アスラが身に付けられる日がくればいい。2009/08/09
どんちん
316
うーーーん、ちょっと悲しい結末であった。今までの格闘は、バルサが怪我をしても圧倒的に優位であったが、今回はそれなりに追いこめられたり、生死をさまよったりとハラハラドキドキものだっただけに本当に残念であった。確かに目に見えない"神"とどう渡り合うかという点が楽しみであった下巻で結果的には戦うことなく結末を迎えたわけであるから、誰かが犠牲になってしまうのはやむなしなのだが。。。この兄妹の行く末どうなるか気になるところだが、バルサ達の行く末も・・・って、この世界観ではそんなことを気にしてはいけないのだろうなw2014/04/18
absinthe
287
アクションも出し惜しみなく面白いが、人物それぞれの葛藤が面白い。イーハンはどこかリーダーシップを取りたがらないように見えるが、はっきりした意見を持ち、決して流されない人だ。こういう人はカッコいい。今回は葛藤が多くドラマ向きだ。むしろアスラを守ると決めてしまったバルサに迷いがなく、アクションを除けば主人公に見えなくなってしまった。ドラマは人物の心の動きから生まれる。アスラの将来が幸せでありますように。2019/10/18