新潮文庫<br> ベッドサイド

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新潮文庫
ベッドサイド

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  • サイズ 文庫判/ページ数 236p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101301310
  • NDC分類 911.168
  • Cコード C0192

内容説明

「あなたの上にわたしのからだを乗せたまますこし眠るということの蜜」「まず性器に手を伸ばされて悲しみがひときわ濃くなる秋の夕暮れ」。1986年、奔放に性を表現する短歌をひっさげて、大胆かつ華やかにデビュー。世紀末、その歌人はめくるめく愛の営みにたゆたう、孤独の哀しみを歌うまでになった。歌集『ベッドサイド』を中心に、林あまりの15年にわたる歌作の集大成。

目次

1 ベッドサイド
2 ベストセレクション―1986‐1999(MARS ANGEL;ナナコの匂い;最後から二番目のキッス;ショートカット;ふたりエッチ;ガーリッシュ)
3 未刊歌篇

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

281
表題の歌集以外からも採録されていて、デビューから10年前くらいまでの林あまりの歌風をほぼたどることができる。現代版『みだれ髪』と言えなくもない。ただし、表現はうんと今風だ。例えば、こんな歌「夕焼けが濃くなってゆく生理前 ゆるされるなにもつけないSEX」。ここには、従来の概念からは短歌にあるまじき「SEX」などという語が出てくるが、他には「ファック」も。ちなみに、それが彼女の最も過激な歌だろう(ここには書きにくいレベル)。しかし、歌は身体と心のすべてをかけて真摯に詠まれた、切れば血の出るような表現である。2013/02/04

夜間飛行

169
社会生活と個人生活を重ねるような歌が気になった…《愛や恋や 傾いだ夜の仕事場で/べつの男の声が聞きたい》。自分が短歌に求めるものが見えてくるように感じた。すでにある正しさとは違う、言葉が開いていく「可能性としての正しさ」。《文脈は無視して犬のように仕える/振るべき尻尾などないままに》…性愛とも取れるし職場の人間関係とも取れる。皮肉やアンニュイと違い、すでにある正しさに罅を入れていく言葉には切れがある。《クリスマスイヴに精液はじける国/汚れた雪にまみれて祈る》…祈るという言葉もまた世界と個人を繋ぐ罅割れだ。2021/04/22

夜間飛行

168
少しだけ読んだ。《直角に見下ろすかたちうっとりとしている男をあわれむような》《いくらでも奉仕しながら快感はたやすくわたしだけのもの》…直角に見下ろされる男(私自身)という想像をした事がなくて驚いた。快感は私だけのものという女性心理の、この「たやすく」が凄い。言葉として圧倒的に正しいのだ。プルーストがコレットを読んだ時の衝撃を想った。《夢の中で子を産む 夢の中でさえ苦しむばかりで何も産まれず》…この「でさえ」も刺さる。短歌は言葉の切れ…言葉で読ませるかどうかだ。深浅の問題ではない。波打際で遊ぶ愉しさもある。2021/04/16

夜間飛行

167
《このいまのあなたの匂い/くんくんとただくんくんとこのいまのため》…「ただ」の一語から感情を折り返す流れが胸にすっと入った。この人の歌は男が描く永遠の女性とはかけ離れた女性の姿に目を瞠りつつ、知的な面白さに誘われる。《少年のからだは鋏/ゆっくりと青い折り紙切り裂いてゆく》…こちらは「少年のからだ」を「鋏」に喩えたあと、その動きを「ゆっくりと」別の世界に転写している。「青い折り紙」が何を意味するか一寸考えてしまうが、こういう言葉は他の何かに置き換える必要もなく、言葉としての自然な広がりを愉しめばよいだろう。2021/07/20

夜間飛行

166
初期の歌も勢いがあってよいなあ。《きょう会ったばかりでキスは早くない?/ヤヨイ・トーキョー春花咲きて》…字面だけ見ると軽薄そうだが、口ずさむと下句の落ち着きぶりに驚く。《犬猫の発情の話おりまぜて目に星のある青年の誘い》…危険なものへの嗅覚が虚構性を帯びる時、人は運命と戯れる事ができるのだろうか。後書きに、高校の授業で寺山修司の《マッチ擦るつかのま海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや》にハッとしたとあるが、虚構や危険なものへの志向は寺山に似る。《緋のじゅばん備えつけたるホテルにて/マッチ擦りたし今宵のお七》2021/07/06

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