新潮文庫
脳と仮想

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  • サイズ 文庫判/ページ数 264p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101299525
  • NDC分類 491.371
  • Cコード C0110

内容説明

「ねえ、サンタさんていると思う?」歳末の空港に響いたひとりの少女の声。数量化できない微妙な質感=クオリアを出発点として、物質である脳になぜ心というものが宿るのかを研究し続けてきた著者は、その少女の言葉をきっかけに「仮想」の不思議さに取り憑かれる。近代科学の到達点と限界点を明らかにしつつ、気鋭の論客が辿りついた現実と仮想、脳と心の見取り図とは。画期的論考。

目次

序章 サンタクロースは存在するか
第1章 小林秀雄と心脳問題
第2章 仮想の切実さ
第3章 生きること、仮想すること
第4章 安全基地としての現実
第5章 新たな仮想の世界を探求すること
第6章 他者という仮想
第7章 思い出せない記憶
第8章 仮想の系譜
第9章 魂の問題

著者等紹介

茂木健一郎[モギケンイチロウ]
1962(昭和37)年、東京生れ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学理学部、法学部卒業後、同大大学院物理学専攻課程を修了。理学博士。理化学研究所、英ケンブリッジ大学を経て現職。クオリア(意識のなかで立ち上がる、数量化できない微妙な質感)をキーワードとして、脳と心の関係を探求し続けている。2005(平成17)年、『脳と仮想』で小林秀雄賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ヴェルナーの日記

89
現実と仮想との境界線は、本人が感じている以上に曖昧であり、自分が認識していると現実は、果たしてどこまでが現実なのか、を問いかけた1冊。視覚で取り込んだ情報を脳の中で、1度分解して再構築する。その過程で自分だけの特有なバイアスがかかる。すると、自分の感じている、例えば、「赤い夕日」の”赤さ”と、他人の感じる"赤さ"とでは、差異が生じる。私観ではあるが、この構成を哲学的な視点で観ると、認識できるものは構造主義的で"真"あり、認識できないものは脱・構造的で"偽"という具合に観ることができるのではないであろうか。2015/02/15

ゆか

37
仮想の世界は人間には絶対必要ですよね〜。夢見る事も仮想なわけだし。以前に読んだクオリア関係物よりもはるかに読みやすい!有名小説なんかを題材にし、例をあげてくれてるんだけど、話や説明そのものよりも、その例にあげた有名小説の解釈なんかが楽しく読めた理由なのかも…(笑)文豪作品や、海外有名小説も読んでみたいなぁ〜としみじみ思ったけど、頭が回らなくなりそうなので、しばらくは現代文学に専念(笑)仮想しやすいし…。2016/01/07

Kikuyo

28
人間の感性、思考の世界は本当に広くて豊かであることを教えれた。 「仮想」という、もろくて絵空事のような世界がこれほど豊潤な世界の広がりを見せるのかと驚く。自分の視野も広がる。「仮想」の力の可能性にも無限の知力を見る思いだ。 この世界は断絶の世界。しかしながら 因果的な自然法則に基づき突き詰めていく、狭い世界で扱う科学という手法もまた、時代がすすめば「儚さ」「切実さ」といった叙情的なものとの融和を果たして行くのではないだろうか。思い出せない記憶の重大さという7章が興味深い。2017/08/12

Mishima

23
「意識」と「無意識」のパラレル。「理性」と「感情」のバランス。この切り口から、私が自らを振り返り想起したのは、物語の偏愛性。「現実と思えるもの(と脳が意識するもの)」と潜在意識からのもの(想像)」が分け隔てなく公平に描かれ、全く不自然さを感じさせない物語に強く惹かれる。「脳と仮想」が、その仕組みを解き明かしてくれた。わずか253ページ。盛り込まれた内容は途方もなく膨大で、一読ではアウトラインを掴むくらいで精一杯。何度も読むしかない。2017/04/28

きょちょ

22
人はほとんど仮想(イマジネーション)の中で生きていることを、様々な例・考え方を示しながら教えてくれる良書。 その例・考え方は、サンタクロース、源氏物語、枕草子、たけくらべ、小林秀雄、夏目漱石、柳田国男、小津安二郎、ワーグナー、デカルト、引田天功のようなマジシャンなど多岐にわたって面白い。 四章「他者という仮想」は、他者と良いコミュニケーションをとるうえでも参考になる。 九章「魂の問題」の、「有限の現実世界と、無限の仮想世界~を感謝を込めて味わうべきなのだろう」は同感。 ★★★★2017/01/05

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