内容説明
浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など―日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。
著者等紹介
向田邦子[ムコウダクニコ]
1929‐1981。1929(昭和4)年、東京生れ。実践女子専門学校(現実践女子大学)卒。人気TV番組「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など数多くの脚本を執筆する。’80年『思い出トランプ』に収録の「花の名前」他2作で直木賞受賞。著書に『父の詫び状』『男どき女どき』など。’81年8月22日、台湾旅行中、飛行機事故で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
317
「犬小屋」について。ホンワカした話と思いきや、終盤に斜め上の展開で暗転しますが読後感は決して悪くはなく、ノスタルジックな思いでエンディングを迎えます。「想い」は「重い」のでなかなか時間が掛かるものですね。2023/07/02
ykmmr (^_^)
265
向田さん初読。『思い出トランプ』と言う、綺麗&ハッピーな中身を連想させるが、実は中身はダーク。人間の醜さ・儚さ・正直さ・ダークさを描いているのだが、その内容は重層で、人間の闇・らしさそのものなのに、それを颯爽とささっと、ある意味爽やかに書いていて、中々読みやすい。ストーリーの作り方も上手く、色々な展開が楽しめる。人間は、『誠実』に生きようとしているが、実は何処か『正直』にも生きているんだよね。まあ、時代が『昭和』なのは仕方ない。その時代に書かれたし。私を含めて、『昭和』の生活をあまり知らない人もいるし。2022/01/20
masa@レビューお休み中
219
人生はまるでトランプのようだ。劇的な大逆転があったり、手札通りの手堅い人生があったり、引いてしまったジョーカーを手放せずにいたりすることがある。向田邦子の鋭利で怜悧な人間の機微を描いた13篇の物語は、読むほどにひたひたと怖さが募っていく。脳卒中で倒れた宅二と、その世話をする妻の厚子の一日を描いた『かわうそ』。社長である庄治が、就職の面接に来たトヨ子にマンションをあてがった様子を描いた『だらだら坂』。どの物語も不穏な出だしではじまり、不穏な状態のまま収束していく。人生とは所詮そんなものといわんばかりに…。2015/05/30
射手座の天使あきちゃん
218
読友様お奨め本 トランプのエースからキングになぞらえて13の短編を収録(ラストのタイトルが「ダウト」とは小粋) 男と女、親戚・家族、色々な人間関係の内に秘めた嫉妬・愛憎・恩讐・後悔などを味わう大人の読み物でした(笑) 精神的に子供のわたくしは尻込みしてしまいました! <(^_^; それと面白かったけど年代的にギャラリーで白黒写真を見せられた感じになりましたね(笑)2014/02/23
kinkin
217
携帯もネットもなかった時代、でもそれなりに幸せだった昭和を丁寧に切り取った短編の数々は、何度でも読み返すことができる。 2013/02/07