内容説明
捨てたものではなかったです、あたしの人生―。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ主婦と姑、両親の不仲をみつめる小学生、そして裸足で男のもとへ駆けていった女…。それぞれの人生はゆるくつながり、わずかにかたちをかえながら、ふたたび続いていく。東京の小さな町を舞台に、平凡な日々の豊かさとあやうさを映し出す連作短篇小説。
著者等紹介
川上弘美[カワカミヒロミ]
1958(昭和33)年、東京都生れ。’94(平成6)年「神様」で第一回パスカル短篇文学新人賞を受賞。’96年「蛇を踏む」で芥川賞、’99年『神様』でドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、’01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、’07年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
477
これまでは相性が良かったとは言えない、川上さんの連作短編集。「どこから行っても遠い町」にある、魚屋さんや小料理屋的なお店を中心に、なんらかの関わりがある人たちの恋と生き方。先ずはその連なり方が上手いなぁと思う。川上さんというのは、『センセイの鞄』でもそうだったが、男女の年齢差に重きを置いていないらしい。廉ちゃんと央子さんの恋愛が、わたし的にはとても響いた。男の人ってこんなこと考えてるのか、なんて。これもまた読了後、今度はひとりひとりの繋がりを再確認するために、再読したくなること請け合いである。2020/10/28
yoshida
252
小さな街で生きる人々の姿を描いた連作短編集。川上弘美さんの作品特有のふと涙がこぼれそうな寂寥感、不確かさ、崩れてしまいそうな危うさを感じます。多くの短編が収録されているのですが「四度めの浪花節」、「急降下するエレベーター」、「濡れたおんなの慕情」が特に好みでした。それぞれに共通する女と男の不確かさ。そして作品にもよるのだが、最後に仄かな灯りがある。この不確かさと寂寥感に心惹かれる。そして川上弘美さんの作品を手に取る。本作は短編集なので読みやすい。川上弘美さんの作品を、これからも大切に読み続けたいと思う。2018/02/13
❁かな❁
204
やっぱり川上弘美さんの作品好きだなぁ♡川上さんの作品を読むのは12作目。東京の小さな町を舞台にゆるやかに繋がっている連作短編集*川上さんらしい空気感はそのままですが他の作品よりもリアルで生々しさもある。それぞれのあやふやな関係も良くゆっくり味わいながら少しずつ読みました。「四度目の浪花節」の央子さん魅力的で何度も繰り返してしまう2人の気持ちもわかる。「長い夜の紅茶」「貝殻のある飾り窓」の関係も良く「どこから行っても〜」「ゆるく巻く〜」への流れもすごく良かった*読了後すぐまた最初から読みたくなる素敵な作品♡2017/11/25
しんたろー
194
東京の架空の下町を舞台にした11話の連作短編集…各話が緩く繋がった話は一言で評すれば「下町人情もの」なのだが、そんな陳腐な言葉では表現できない奥行を感じた。街の匂いが人々の温もりと共に漂ってきて、人生の機微や人間の複雑さをシミジミと感じた。1話目からの流れもあってか、10話目の表題作とラストの『ゆるく巻くかたつむりの殻』は秀逸で思わず溜息が出た。何処にでもいそうな老若男女を書き分ける筆力も高く、川上さんはまだ3冊目だがすっかり魅了された。「平凡って、幸せって、何だろう?」と取り留めなく考える冬の夜だった。2019/02/12
酔拳
186
商店街を舞台にした、短編集です。11編の短編から構成されていて、どの話も、どこかつながっています。素敵な商店街だと思いました。魚春にも行ってみたいし、居酒屋ぶどう屋にも行ってみたいとおもいました。 印象に残ったのは、「蛇は穴に入る」の出だしの文です。「年をとるって、自分の今までの人生が、どっと自分の上にふりかかってくるってことなのよね。」という文がうまいなっておもいました。2016/03/05