内容説明
歴史学者・須貝彰は、南仏の図書館で世紀の発見をした。異端としてカトリックに憎悪され、十字軍の総攻撃を受けたカタリ派についての古文書を探りあてたのだ。運命的に出会った精神科医クリスチーヌ・サンドルとともに、須貝は、後世に密かに伝えられた“人間の大罪”を追い始める。構想三十年、時代に翻弄された市井の男女を描き続ける作家が全身全霊をこめた、歴史ミステリ。
著者等紹介
帚木蓬生[ハハキギホウセイ]
1947(昭和22)年、福岡県生れ。東京大学仏文科卒業後、TBSに勤務。2年で退職して九州大学医学部に学び、現在は精神科医。’79年に『白い夏の墓標』を発表、サスペンスの舞台を海外に据えた物語は直木賞候補となった。’93(平成5)年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、’97年『逃亡』で柴田錬三郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
144
カトリックから弾圧され徹底的な迫害を受けたカタリ派。歴史学者の須貝はカタリ派の研究の為、南仏へ赴く。カタリ派弾圧の資料を発見した須貝は研究会で発表。更なる調査を続ける。カタリ派の弾圧はカトリックの明かしたくないタブー。カタリ派の調査を続けるにつれ、須貝の周りに死者が出る。そこまでして隠さねばならないカトリックの大罪とは何か。カタリ派への十字軍派遣と酷い処刑。現在のフランス建国の歴史、そしてオキシタン語など新たに知ることばかり。歴史は勝者により造られる。しかし敗者も僅かな痕跡は努力で残る。重厚感溢れる作品。2017/05/04
ehirano1
86
「アキラ、私たち歴史家の仕事は・・・私たちはそれまで見えなかった過去を見えるようにしなければならない。見えているのに気づかなかったり、見ようともしなかった過去を明瞭にするのが任務だよ」。だから本書の主人公は『手稿』に拘ったのだということが理解できます。2021/11/26
ehirano1
81
カタリ派信仰の柱が「善悪二元論」と「キリスト仮幻説」で、三位一体も認めず、キリストの復活を否定・・・・この世の目に見えるモノは全て悪の具現であり、不可視的なものその神の創造物で、キリストが人の形取ったとすれば、悪の産物となってしまう、と。なるほどこれは分かり易いですね。2021/01/16
ehirano1
76
「オクシタニア(佐藤賢一)」を思い出し、出てくる用語がいろいろと懐かしいです。しかし物語は上述のオクシタニアとは全く異なり、D.ブラウン系(ダビンチコード、インフェルノ等)のような感じがします。そうであれば、クリスチーヌがかなり怪しい、ということになりますねwww。2020/03/15
ehirano1
59
本書を読んで当方も主人公同様にノートルダム寺院を見る目が良くも悪くも変わりました。2022/10/23