内容説明
国家の根幹は、国語教育にかかっている。国語は、論理を育み、情緒を培い、すべての知的活動・教養の支えとなる読書する力を生む。国際派の数学者だからこそ見えてくる国語の重要性。全身全霊で提出する血涙の国家論的教育論「国語教育絶対論」他、ユーモラスな藤原家の知的な風景を軽快に描く「いじわるにも程がある」、出生地満州への老母との感動的な旅を描く「満州再訪記」を収録。
目次
国語教育絶対論(国語教育絶対論;英語第二公用語論に;犯罪的な教科書;まずは我慢力を;産学協同の果ては ほか)
いじわるにも程がある(お茶の謎;ギーギー音;ダイハッケン;科学は無情;ネギよ来い ほか)
満州再訪記
著者等紹介
藤原正彦[フジワラマサヒコ]
1943(昭和18)年、旧満州新京生れ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学理学部教授。’78年、数学者の視点から眺めた清新なアメリカ留学記『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、独自の随筆スタイルを確立する。故・新田次郎と藤原ていの次男(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
93
「流れる星は生きている」著者藤原ていの次男で、数学者の正彦のエッセイ。小学校における国語の重要性について「祖国とは国語である」というシオランの言葉を引いて主張している。そして母親と生まれ故郷である満州を、妻と息子たち一家で訪ねる「満州再訪記」である。当時2歳であった彼にとりその頃のはっきりとした記憶はなく、どこか旅行記のような感慨を持つ。父親が働いていた気象観測所跡では故人である父親の面影を浮かべてセンチメンタルになる。妹も後から合流したとある。しかし本人のその当時の記憶は、当然ながらやはりないのである。2020/09/01
5 よういち
64
【TP1311】国家の浮沈は国語教育にある。国語が重要!◆数学のエライ先生に言語文化が語れるのかと上から目線で手に取ったが、なかなか骨太なことを言ってくれる。少し偏った考え方や、風が吹いたら桶屋が儲かる的な展開もあるが、主張の大半は頷ける内容だ。よく調べて見たら、著者は数学者の他にエッセイストの顔を持ち、彼の両親は新田次郎と藤原ていだという。驚きともに、急に著者の主張にハクがついたような気がしたのは気のせいか。。◆人は持てる語彙を超えて思考できない。/読書離れは国民の知力崩壊を惹起し、国家の衰退を意味する2018/07/02
Miyoshi Hirotaka
64
明治初期に出現した大翻訳時代。先人の努力のおかげで世界レベルの勉強が母国語で可能な環境にある。英語で愛国心にあたる言葉には、ナショナリズムとペイトリオティズムがあるが、この二つは全く異なる。前者は国益主義ともいうべきもので、他国を押しのけてでも自国の国益を追求すること。後者は、祖国の文化、伝統、歴史、自然に誇りをもち、これを愛する精神。富国強兵時代には、これらを区別する必要がなかったが、愛国心=軍国主義と無理に関連付け、国を愛するか愛さないかで論争するのは外から見れば喜劇で、内から見れば悲劇なのである。2015/03/21
Gotoran
56
『国家の品格』の基になる著者の意見が熱く語られている、「祖国愛」に根ざして。国語力が日本人の情緒や思考力に大きく影響を及ぼし、さらに国家の将来にも影響を及ぼすと訴えるエッセイの他、気楽に読めてフフフと笑えるエッセイあり、知性とユーモアたっっぷり。著者の母藤原てい氏の『流れる星は生きている』の舞台への母と著者家族の「満州再訪記」は圧巻、『流れる・・・』を読了していることもあり、両者が重ね合って共振・共鳴した。 さらに、再度、『国家の品格』も読みたくなった次第です。2011/05/31
Nobu A
50
何かでの言及本。藤原正彦著書初読。06年初版、10年第27版。3部構成の随筆集。2部迄秀逸。山本夏彦の薫陶を受けたと思われる諧謔的な筆致。和みつつも随所に示唆に富む。「ゆとり教育」と「詰め込み教育」の対比による考察等、さすが数学者らしい明晰な論理的思考。また「ダイハッケン」は子供の知的好奇心養成に効果的だと思った。一方で「ガス漏れ感知器」の息子に「要するにパパって犬並みなんだね」の件は思わず爆笑。素敵な家族。ただ、最終部は解せない。タイトルとは関連性も薄く長々と。紙面稼ぎ感有り有り。最後だけ流し読み読了。2022/11/19