新潮文庫
魂―命四部作〈第2幕〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 331p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101229263
  • NDC分類 916
  • Cコード C0193

内容説明

わたしたちのあいだでは“末期”という言葉は禁句だった。―わたしはあと二年で死んでもいいですから、東由多加をあと二年生かしてください。なんとか丈陽と東由多加と三人で二年間生きたいのです。神さま、どうかわたしの祈りを叶えてください―最先端の治療を受けるためにアメリカに渡る東。しかし過酷な現実は静かに進行する…。「命四部作」第二幕。

著者等紹介

柳美里[ユウミリ]
1968(昭和43)年、神奈川県生れ。高校中退後、「東京キッドブラザース」を経て、’88年、劇団「青春五月党」を結成。’93(平成5)年、『魚の祭』で岸田国士戯曲賞、’96年、『フルハウス』で野間文芸新人賞、泉鏡花文学賞受賞。翌年『家族シネマ』で芥川賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メタボン

29
☆☆☆☆ 東の癌との闘いは、より壮絶なものに。幻覚の状態がいたたまれない。譫妄状態の人間を目の当たりにするのは、どれだけ辛いことだろうか。私には子供がいないので、赤ちゃんの育児、特に沐浴の大変さも知らなかった。抗がん剤治療について詳細に記述されており、医師によってさまざまな見解があるのだと知ったし、「セカンドオピニオン」は大事だなと思った。しかし残された時間と治療法の選択とには絶対葛藤があるよなと思う。2020/03/09

秋 眉雄

22
『「気をつけなくちゃ」と東は悪戯っぽく微笑んだが、色が線からはみ出した塗り絵のように唇から微笑がずれていた。』こういう文章に、何度もハッとさせられた。計画を立てよう、計画通りに進もうとする柳と東の二人。しかし、計画は頓挫し、計画は立て直され・・死が確実に迫っている中、それらが次第に行き当たりばったりになって行かざるをえない状況に、なんとも言えない切なさが、もはや漂うどころではなくハッキリと充満している。事ここに至っても、苦手な電話をせずにFAXをする柳の不器用さに僕は呆れもするが涙も出てしまうのであった。2019/09/06

やまねっと

6
この2020年の後半に入ってすごい本に出会ってしまった。 「命」では出産についてだったが、この「魂」では東由多加の闘病生活を中心に書かれている。 幻覚で朦朧としながらも死に向かっている中でこの本は終わっていく。 続きが気になって仕方ない。絶版なので直ぐには手に入らないが、図書館で検索してでも明日にでも手に入れたい。 このシリーズは4部作だから、あと2巻ある。どこまで書かれるか固唾を飲んで見守りたい。というかこの3人を見届けたい。2020/09/20

kera1019

3
個人的には患者の尊厳や苦痛よりも延命治療に重きをおく医療の雰囲気には馴染まれへんし抵抗があるけど、東氏の「出来る事は何でもやって、後二年は絶対に生きる」という意思に深く感銘を受けた。癌の増悪による痛みや抗癌剤の副作用による倦怠感、出口の見えへん闘病生活など、とても俺には立ち向かえるもんじゃないし、すぐに対処療法かホスピスを選ぶと思う。最後まで癌に立ち向かう勇気に敬慕します。2013/10/10

ちゃこ

3
第二幕。こんなに辛いことが他にあるだろうか…沐浴の場面は毎シーン、白い柔らかな光に包まれているように感じました。東さんの口調が好きです。新生児と病人を抱えて、それでも書かなければ生きていけない、文字通りの、その書くことへの執念を感じながら読みました。先に読んでしまった「黑」も四部作読み終えたらまた読みたいです。2013/04/02

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