出版社内容情報
「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土地、そこに住んでいる人間をじかに知りたい」という著者が、スクーターでヨーロッパ一人旅に向かったのは24歳の時だった……。ブザンソン国際指揮者コンクール入賞から、カラヤン、バーンスタインに認められてニューヨーク・フィル副指揮者に就任するまでを、ユーモアたっぷりに語った「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
127
世界的な指揮者小澤征爾の青春記。素晴らしい作品だった。気概に満ちてユーモアたっぷり。ヨーロッパやアメリカの社会や文化に対する洞察も鋭い。一番感動したのは、音楽を通して、小澤氏が日本人の枠を超えていくところだ。生まれた国は異なっていても、音楽があれば人は一つになることができる。この本はそのことを証明している。日本から来た無名の青年を素直に受け入れるフランスの人達の懐の深さにも感激した。日本人は日本人であることにこだわりながら、西洋の文化を深く学ぶことで真に成熟できると思う。この本はその証明かもしれない。2018/07/06
HIRO1970
115
⭐️⭐️⭐️今はもうすっかり大家・大御所とも言える日本の誇る音楽の第一人者である小澤征爾さんですが、まさに書名通りの武者修行時代の最初の3年間の24〜26歳の頃の様子が書かれています。文筆家ではないので、文章力はイマイチですが、それを補って余りある非常に疾走感と勢いのある内容に圧倒されました。前々から偉ぶらない出来た人だなとは思っていましたが、家族そして友人想いの優しさがズバ抜けて強い人である事が改めてわかりました。大勢の人をまとめる指揮者のスキルに通じる才能が随所に感じられました。オススメです。2014/04/15
ゴンゾウ@新潮部
104
海外留学が難しかった時代に単身ヨーロッパに渡り音楽の武者修行に行った世界のオザワ。怖いものなしで果敢にコンクールに挑戦しチャンスを物にしていく。バーンスタイン、ミュンシュ、カラヤン、世界の名だたる指揮者に師事し成長していく姿はとても素晴らしい。音楽や芸術に対する愛情は瑞々しく美しい。そして遠く離れた家族に宛てた愛情深い手紙。世代を超えて読み継がれるべき青春記。2016/06/27
あすなろ
103
26歳の小沢征爾氏が書いた2年半の修行旅。スクーターを唯一の財産として貨物船に乗り、マルセイユからパリ、仏国内、米、独、再び米と廻った。当時は画期的だっただろうが今でも充分画期的、否、刺激的である。若者よ海外へと書かれているが僕でも未だに海外へ少し行くだけでも充分な刺激を受ける。そして、眼での音楽家の話、ミンシュやカラヤンの話等々、とても面白く読了したのであった。長年読みたいと思っていた本であったが、やっと読めた!若さ溢れる本で書き込み自体は物足りなさあるが、そこは差し引いて考えても充分な一冊であった。2020/04/20
扉のこちら側
98
初読。2015年1173冊め。てっきり小澤さんは裕福なご家庭のご子息で音楽留学をされてブザンソン入賞という王道をたどったのかと思いきや、単身ヨーロッパに向かったのはまさに「武者修行」の行き当たりばったりの旅だったとは。人柄がにじみ出る家族あての手紙が素敵。一番笑ったのは「数学の先生などというのは、あまり現実的にはできていないらしい。」というところ。より浮世離れしていそうな音楽家がそれ言っちゃうのか!と。【新潮文庫の100冊1981】2015/12/01