出版社内容情報
塩野 七生[シオノ ナナミ]
著・文・その他
内容説明
三人の皇帝が相次いで倒れ、帝政ローマの統治機構に制度疲労が生じ始めていた頃、それを裏付けるように、辺境で異民族の反乱が勃発した。西方のゲルマン系ガリア人が独立を宣言したのだ。一方、東方ではユダヤ人が反抗を続け、帝国は一層窮地に立たされる。この苦境の中に帝位へ登ったヴェスパシアヌスは、出自にも傑出した才能にも恵まれていなかった。しかし時代が求めた別の資質、「健全な常識人」を武器に、彼は帝国再建に力を注ぐ。
目次
第4章 帝国の辺境では(属州兵の反乱;ユリウス・キヴィリス;攻めこまれるローマ兵;「ガリア帝国」;ローマ史はじまって以来の恥辱 ほか)
第5章 皇帝ヴェスパシアヌス(在位、紀元六九年十二月二十一日‐七九年六月二十四日)(ローマへの道;帝国の再建;人間ヴェスパシアヌス;「皇帝法」;後継者問題 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
411
第9代皇帝ヴェスパシアヌスを描く。この人ほど腹心の部下に恵まれた皇帝もいなかったのではないかと思われる。そもそも、ヴィテリウス帝に反旗を翻したドナウ防衛線の軍団が次の皇帝にのぞんだのはムキアヌスであった。それを彼は自らは副官に徹して、皇帝ヴェスパシアヌス実現のために粉骨砕身の働きをするのである。自分はローマ帝国の再建に相応しい人物とは思えなかったのか、あるいはヨセフスの預言を信じた故であったのか。結果からすれば、ヴェスパシアヌスの皇帝としての帝国再建がなったのだから、それでよかったのかもしれないが。2020/08/19
レアル
113
1年で3人の皇帝が変わった後、ローマ周辺で起こった反乱やユダヤ戦記。そして、ヴェスパシアヌスが皇帝につき、立て直しを図る!どんな苦境でも克服するローマ。それにしてもローマはどんな戦いに勝利しても、報復しないで「何もなかったことにする」その寛容力。素晴らし過ぎるし見習いたい!2014/02/12
ハイク
97
このところ皇帝の指導力未熟でローマ帝国は混乱に陥った。またゲルマン系のガリア人がロ-マ帝国に反旗を翻しガリア王国を作った。その頃エルサレムのユダヤ人の暴動が起こりこれが大騒動となった。ローマはヴェスバシアヌスの指揮の軍隊を派遣して鎮圧した。こうしてヴェスバシアヌスが60歳で皇帝となった。決して卓越した皇帝ではなかったが、ムキアヌスの軍事統率力や息子のティトウスの温厚な人柄の協力を得て、帝国を治めたのであった。死に至る10年間は派手ではないが、ローマ帝国の混乱を着実に回復させた。後継はティトウスに託した。 2018/11/14
ehirano1
96
危機の中でもそれを克服できる人材が必ず出てきたのがローマ帝国の強さではないでしょうか。その証がヴェスパシアヌス。病に倒れた時の「かわいそうなオレ、神になりつつあるようだよ」はなんとも微笑ましいです。2018/04/07
ケイ
91
66年からのユダヤ人問題は、パレスチナに住むユダヤの急進派を中心に起こった。ローマ軍のユダヤ侵攻の司令官がヴェシパシアヌス。のちに「ユダヤ戦記」を書いたヨセフスは、ユダヤが攻められている状態でヴェシパシアヌスに面会を申し入れ、彼こそローマの皇帝になると予言する。次にではなかったが、果たして皇帝となったヴェシパシアヌスは、エルサレムのユダヤ人には厳しい処置をし、ここでカエサル以来のユダヤ人に対する寛大な処置は終わった。ヴェシパシアヌスは高貴な出自ではなかったので、息子を皇位につけるため皇帝法を制定する。2014/11/06