内容説明
紀元54年、皇帝クラウディウスは妻アグリッピーナの野望の犠牲となり死亡。養子ネロがわずか16歳で皇帝となる。後に「国家の敵」と断罪される、ローマ帝国史上最も悪名高き皇帝の誕生だった。若く利発なネロを、当初は庶民のみならず元老院さえも歓迎するが、失政を重ねたネロは自滅への道を歩む。そしてアウグストゥスが創始した「ユリウス・クラウディウス朝」も終焉の時を迎える…。
目次
第4部 皇帝ネロ―在位、紀元五四年十月十三日‐六八年六月九日(ティーンエイジャーの皇帝;強国パルティア;コルブロ起用;母への反抗;治世のスタート ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
408
第5代皇帝ネロの登場。彼こそは「悪名高き皇帝」の最たるもの。実母を殺し妻を殺し、自分の教師であったセネカと忠実で有能であった将軍コルブロを死に追いやり、あげくはキリスト教徒たちに放火の罪を着せて殺戮、とまさに悪行の限りを尽くしたのだから。もっとも、塩野氏はそわなネロを描くに「最初の5年の善政」だけではなく、ローマの大火時の果断で迅速な対応など、いい点もあげている。しかし、竪琴を奏で、歌手としてギリシャで評価されたいなどと、とんでもなく子供っぽい皇帝であり、それがローマとキリスト教徒にとっての不幸を招いた。2020/01/11
レアル
119
5代ネロは10歳代という若き皇帝だった。当初はとても人気も高かったが、母親殺し、妻殺し、そしてローマの大火の後始末、歌手デビュー?と皇帝あるまじき行為に人々は愛想を尽かす。そしてもはやこれまでと悟ったネロは…。暴君の代表と呼ばれるネロ。特に大火をキリスト教の罪にし、迫害した事が後世にこれだけ響くとは、この頃のネロは考えていたのだろうか!2014/01/16
ehirano1
105
トリを務めるのは、いろんな意味でみんな知ってるネロさん。悪名高き(?)4皇帝の皆様、お疲れ様でした。リーダー論について改めて勉強し直すことが出来ました。そんなことより、ネロの自死を以ってアウグストゥスがはじめた「ユリウス・クラウディウス朝」の崩壊、そして彼が創設した「デリケートなフィクション」という政体の終焉。ネロの残虐性は知っていても、特に後者についてはこんなことに今まで気づきもしませんでしたヨ。大変勉強になりました。2017/12/02
ハイク
91
母親の陰謀で皇帝となったネロの時世の物語である。クラディウスがカリグラの失政を回復させた。その後ネロはまだ16歳の若さで皇帝になったが、周りの助けでなんとかこなしていく。ローマ大火の対処は評価されたが、わがままに育ったせいか、時の経つにつれて独善的な振る舞いが多くなってくる。キリスト教徒の虐殺更に母親や先妻を殺害して、周囲等から見放されていく。ついに行き詰まり自殺する。この結果アウグストゥスの血筋が絶えた。ネロは悪評高い皇帝であっ たが、よい所もあり塩野さんはこの方面にもスポットをあて描いている。 2018/10/20
優希
88
悪名高きといえばこの人は外せない、ネロです。悪帝とは言われているものの、意外にも義政を行ってはいたようです。しかし、キリスト教徒大虐殺など、後に「国家の敵」と断罪されるような采配を振るうようになったのですね。り発だったネロが自滅へと導かれる流れは複雑な思いがあります。2018/07/25