出版社内容情報
塩野 七生[シオノ ナナミ]
著・文・その他
内容説明
ローマ世界に平和をもたらし、繁栄の礎を築いたアウグストゥスを、人々は「国家の父」と呼ぶようになる。しかしその彼にも大きな悩みがあった。後継者を誰にするか―妻リヴィアの連れ子ティベリウスは偉大なる父に反発して一方的に引退。娘ユリアの息子たちに期待をつないだものの、いずれも若くして死んでしまう。カエサルの構想した帝政は果してローマに根付くのか。アウグストゥスの「戦い」は続く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
427
14からの3巻は「パクス・ロマーナ」を招来させた初代皇帝アウグストゥス伝であるが、この下巻はいよいよ彼の晩年である。万事に周到であり、遠大なスパンで事に当たったアウグストゥスであるが、後継者選びばかりは思うようにいかなかった。アウグストゥスが切望した彼の血を引く者たちは次々と早世し、2代皇帝に就いたのは、本人もそれを望まず早々に隠棲していたティベリウスであった。しかし、このティベリウスもまたなかなかに魅力的な人物であり、軍団の圧倒的な支持もそれを物語っている。帝政ローマは結局、最良の後継者を得たのである。2019/11/21
ehirano1
131
皇帝であれ何であれ、人生を通じて各々は何かと闘う宿命にあるんだなぁ、ということを再認識しました。オクタヴィアヌスの終盤は「血族(娘の醜聞、家族の不祥事、後継問題)」との闘いが印象的でした。2017/08/18
レアル
114
ローマの政治を常に冷静にかつ「ローマの平和」を築いてきたアウグストゥスも世襲にこだわり過ぎたか。それでも最後はティベリウスと理解しあえたのは救われたのかもしれない。カエサルが構想した帝政ローマを築き上げようとしたアウグストゥス。カエサルと比べられながらも、初代皇帝としての責任感と偉業を成し遂げた成果をみればその手腕は素晴らしいものではないかと思う。2013/12/18
ハイク
105
アウグストゥスは60歳と老いて来た。老いると心配するのは後継者の問題だ。これまで跡継ぎとしていた孫たちが死んでしまったからだ。そんな中ロードス島に引き籠っていたティべリウスが復帰した。皇帝は彼を養子にして後継者としたのである。更に弟のドゥルーススの遺児ゲルマニクスを養子に迎えて、その後の皇帝候補としたのである。アウグストゥスは家族には恵まれなかったが、皇帝としては成功したのだ。77歳の前に死んだ。カエサルが考えアウグストゥスが共和制を目指すと嘘をついて帝政をの基盤を作ったローマはその後長く続いたのである 2018/09/19
ケイ
88
アウグストュス統治後期は、守りにはいったかのような政策が取られる。姦淫は罪だと法で決め、違反すると女性は強く罰っせられ、彼の娘や孫もそれを逃げられなかった。また独身より既婚者が、さらに子持ちが優遇される税法も制定した。男子の孫を跡継ぎにしようとしても相継いで亡くなり、ティベリウスに後を託す。また晩年にはゲルマン地方の反乱もあり、ゲルマンとの国境は西のライン川と後退した。アウグストュスは、77才で死を迎える。2014/10/30