内容説明
紀元前2世紀半ば、強大国であったカルタゴを滅亡させ、ローマは地中海世界の覇者と呼ばれるようになっていた。しかしそのローマも次第に内部から病み始める。名将スキピオ・アフリカヌスの孫であり、若き護民官となったティベリウス・グラックスは、改革を断行すべく、強大な権力を握る元老院に挑戦するが、あえなく惨殺される。遺志を継ぎ護民官となった弟ガイウスの前にも「内なる敵」は立ちはだかる。
目次
第1章 グラックス兄弟の時代(紀元前一三三年~前一二〇年)
第2章 マリウスとスッラの時代(紀元前一二〇年~前七八年)
著者等紹介
塩野七生[シオノナナミ]
1937年7月7日、東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業後、イタリアに遊学。68年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。82年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。83年、菊池寛賞。92年より、ローマ帝国興亡の一千年を描く「ローマ人の物語」にとりくむ。93年、『ローマ人の物語1』により新潮学芸賞。99年、司馬遼太郎賞。2002年、イタリア政府より国家功労賞を授与される
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
138
「内なる敵」に興味を惹かれて通読。内なる敵では「同胞」が相手なのでかなり厄介ですね。だから憎しみや残虐性も増しているのかもしれません。また、著者の「まったく、“混迷”とは、敵は外にはなく、自らの内にあることなのであった(p113)」という記述は印象的でした。2017/03/05
ヴェネツィア
135
ハンニバル戦役を終えて、次なる時代のローマまでの過渡期であると同時に、ローマの体制そのものが大きく変化しようとする時期の物語。この巻は「勝者の混迷」と題されているが、戦役が外に向かうものであるのに対して、ローマ人は自らの内にあった内政の危機を様々な苦難を経て乗り越えてゆく。しかし、政治とはつくづく難しいものだと思う。ローマの将来にとって正しい政策と理想を掲げ、すべてを投げ打ったグラックス兄弟は、共に非業の死を迎えなければならなかったのだから。おそらくは、それもまたローマにとっては必要な犠牲だったのだろう。2012/11/03
ケイ
89
カルタゴ滅亡後地中海の覇者となったローマには、土地を持てないローマ人の失業者が増える。スキピオの孫のティベリウスとガイウスのグラックス兄弟は、ともに30歳になるのをまちかねたように護民官になって農地法を制定しようとしたが、反対する人々に無残に殺される。元老院に権力は集中し過ぎていたし、人々は既得権益を用意には離さないものだ。10年ほどしてマリウスという男が護民官となり、軍の司令官となり、ヌミディアや南下してくるゲルマン人と向かい合う。「ゲルマン人が腹を満たしている間に…」などの表現は少し意地悪。2014/10/15
優希
83
紀元前2世紀頃、ローマは遂に地中海の覇者と呼ばれるようになっていたようです。しかし、次第に内部から崩れ去ろうとしているのが歴史なのですね。グラッスス兄弟が台頭し、強大な勢力に戦いを挑むのは、ローマを守るためだったのでしょう。それでも内なる敵を止めることは難儀であることがわかります。下巻も読みます。2018/04/09
ehirano1
80
再読。グラックス兄弟の改革失敗を軸に話が進みます。初読の時も気になっていたのですか、グラックス兄弟はどうすればよかったのでしょうか?彼らの改革失敗を後世の教訓とするならば、それは一体何でしょうか。「タイミング」、「やり方の問題」なのでしょうか?それとも彼らは唯単に「時の犠牲」として必要だった?著者が「タイミング」や「やり方の問題」にあまり言及していないことから、意外と後者の考えであるような気がするのですが・・・・・。2017/04/08