内容説明
増大した老齢人口調節のため、ついに政府は70歳以上の国民に殺し合いさせる「老人相互処刑制度」を開始した!和菓子司の隠居、宇谷九一郎の住む宮脇町には、もと自衛官、プロレスラー、好色な神父など「強敵」が犇めいている。刃物と弾丸が飛び交い、命乞いと殺し合いの饗宴が続く。長生きは悪なのか?恐怖と哄笑のうちに現代の「禁断の問い」を投げかける、老人文学の金字塔。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌『NULL』を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が『宝石』に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’97年、パゾリーニ賞受賞。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まじゅ
64
相変わらずシュールな世界である。物語ではシルバー・バトルという老人同士で殺し合いをさせる政府の政策が施行される。超高齢社会到来に対し国がその場しのぎの対策しか打てない事を痛烈に皮肉る。山藤さんの挿絵が新聞の風刺画のように効果的。バトル後、主役級の老人のセリフ「老人がいなくなって5丁目はつまらない町になってしまった」その通りだと思う。歴史は人が作るもの。地域の歴史はそこに住む御老人達が作ってきた。それをぶった切っては過去も未来も無い。故に俺を含めた老人を大切にしろ!という筒井氏の声が聞こえそうだった。2012/12/14
ざるこ
59
高齢化社会である。著者もそんな年齢ながら鋭く斬り込んじゃう。政府は老齢人口調節のため70才以上の国民に殺し合いをさせる「老人相互処理制度」を開始、生き残りをかけたシルバー・バトルが展開する。ワルサー、ライフル、手榴弾、出刃包丁に柳刃包丁、老人が老人を殺しまくって脳みそはバンと飛び散り、内臓はちゅるちゅると流れ出る。あー先生、悪趣味が過ぎますぞ。わはははは!「老人に対する冒涜だ!」とか「差別用語がヒドイ!」とか言うのはナンセンス。荒唐無稽な筒井ワールドを吐き気をもよおしながら読めばいいのだ。挿画も素敵!2021/04/07
はつばあば
57
これはねぇ、もう70過ぎてから読む本じゃないわ(^^;。筒井康隆さんのお幾つの時の作品かしら。「70過ぎた者達よ、お前たちは長生きし過ぎて人口も多い、その癖金を吐き出さん。各区域に男女一人ずつ残ってもいいことにするから殺し合え!」っていうのが本の内容。施政者ってほんとどうしようもない。戦時中は「産めよ増やせよ」。若者に仕事が無くなった時3Kとも言われる「老人を労わりましょう」介護保険を使ってこんなにいい施設に入れますよ・・。今じゃ「自宅で看取りがいいですよ」。一般市民が老害なんじゃない。↓2021/09/19
まこみや
41
爆走する妄想。非情緒的な突き放すような文体で書かれた、シュールでリアルでブラックなドタバタSFだ。本作は2006年の作品だが、飛ぶ鳥落とす勢いで人気作家になっていった、若き日の氏の作品を髣髴させる。初めて氏の作品を読んだ時、小説がこんなに破茶滅茶でいいものか、と夢中になった。そしてその取っ付きやすさから安易なエンターテインメントの作家と誤解した。しかしその実態は、一つひとつの作品が、膨大な読書量に裏打ちされた理論と内容に即した実験的文体の賜物であることを知った。以来、畏怖措く能わざる作家である。2022/08/14
おたま
39
老人版バトル・ロワイヤルという感じの物語。超高齢化社会への対策として、政府が導入した老人相互処刑制度=シルバー・バトル。爆発的に増大した老人人口を調整し、若者の負担を軽減するための制度。要するに老人の相互殺し合い。拳銃やライフルでの射殺、包丁等の刃物での刺殺、あるいは扼殺、放火何でもアリ。そのバトルを筒井康隆は初期のドタバタ、ブラックユーモアの感じを取り戻したかのように、ノリにノッて描き出す。老人たちは、バトルの激化とともに、何故か次第に生き生きとしてくる。一番生き生きと楽しんでいるのが筒井康隆だろう。2020/07/20