内容説明
見知らぬ夜の街で、若い裸の美女に導かれて奇妙な洞窟の温泉を滑り落ちる「エロチック街道」。九度死んで生きる虫の、いや増す死の恐怖を描いた「九死虫」。海のなかに建つ巨大な家で、水浸しの縁側を少年が漂流する「家」。乳白色に厚く張りめぐらされたヨッパグモの巣を降下する幻想的な川端康成文学賞受賞作「ヨッパ谷への降下」ほか、夢幻の異空間へ読者を誘う魔術的傑作12編。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌「NULL」を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が「宝石」に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’97年、パゾリーニ賞受賞。’96年12月、3年3ヵ月に及んだ断筆を解除。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
82
ファンタジーとは言うけれど、どれもファンタジーとは一線を画す話ばかりでした。そりゃまあそうですね、筒井サンですもの。現実離れした作品もあるけれど、現実的な作品でも、日常から夢幻の世界へと誘われていきます。一見リアリティがありながらも現実と幻想の間を漂っているようでした。異空間にいるようなふわふわした不思議な感覚に陥ります。短編集なのでサクッと読めますが、その世界観は無限の魔術性があると思いました。2015/10/26
こばまり
53
実家より持ち帰り再読。間取りや街並みなどイメージがブワッと広がり、いずれも夢の中の出来事のように幻想的。解説が河合隼雄先生なのも利いている。「薬菜飯店」に行って私もデトックスしてみたい。2023/03/12
ねりわさび
27
川端康成文学賞受賞の表題作の他、あのふたり様子が変。など閉鎖空間で繰り広げられる、狂気一歩手前の白日夢を彷彿とさせる短編が収録されている。筒井康隆による自選幻想文学を、お手軽にサラリと読みたい方にお薦めです。2019/05/10
Tadashi_N
25
筒井康隆流のふしぎな世界。日常の中の非日常。2020/11/10
A.T
25
今、ここにある現実というのが人間の感性でできあがってるだけで、感じ方をかえると世界は変容してゆく。めまいを感じながら読了。2018/12/23