内容説明
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌“NULL”を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が“宝石”に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
1050
モテモテのラゴスと一緒に旅したというか、RPGを体験した気分!。おれ→わたしに変わるのが好き!人生の長さも感じてラゴスと長く過ごした気分になったよ!BGMに東京エスムジカのアルバムを聴きながら再読したいな。歳を重ねても、何度でも再読できる作品です。2015/10/05
ehirano1
716
著者の作品は本書が初ということもあってか(?)、なかなか難解でした。しかし「自らの根源、自らの生を実現することが、本質的に自己完結的な営みではなく、むしろ他者に向かって開かれているものだ、・・・(p257)」という解説で本書がだいぶ分かったような気になっています(失笑・・・)。2016/09/03
青乃108号
692
旅人ラゴスの半世紀に渡る旅の記録。それぞれの逗留地で奴隷になったかと思えば国王になったりまた学者になったりしながら彼の旅は終わらない。最後は昔会った少女デーデの面影を追い最果ての北の地へ旅立つラゴス。全編に渡って静かな印象の物語。寝る前に一章ずつ読む本に丁度良い。俺は何度も途中で眠ってしまったけれど。2022/09/17
seacalf
648
どこにも存在しない世界に、特殊能力を持つ人達との出会いの旅。序盤は寓意的な語り方が非常に面白かった。SFは学生以来ほとんど読んでないけれど、この作品はおとぎ話にも似たストーリー展開で読みやすい。ただ、恋愛に関しては『ラゴスよ、大切なことはもっと早くに気付こうよ』と言ってあげたくなるかな。2016/02/26
れみ
596
高度な文明を突然失ったかわりに超能力を身につけた人々が暮らす「この世界」で旅を続ける主人公ラゴスのお話。「王国への道」が好きかな。こんな風にたくさんの本を読んで暮らしたい。それはそれとして、いま私たちが生きる「この世界」も行き着くところまで行ったらそこで突然全てを失うのかなあとか、知らないだけでそうやってグルグルと同じところを回っているんじゃないかとか、色々妄想してしまった。2015/11/13